保護者は子どもの指導を学校に丸投げするな 「教育困難校」の教師は追い詰められている

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ただ、同じ「教育困難校」でも、その様相には地域差が認められることを筆者は体感した。東京、大阪など大都市及び地域の中核都市近郊の「教育困難校」とそれ以外の地方の「教育困難校」とは明らかに様子が異なるように思えるのである。

「教育困難校」の地域差を大きく感じるのは、保護者の子への関心の度合い、学校への関心と協力態勢の点である。これらが数値として如実に表れるのは、学校行事への保護者の参加率だ。高校では、入学式や卒業式、学園祭や体育祭などの主だった行事だけでなく、進路に関する行事や修学旅行に関する行事など、保護者が参加する行事がたくさんある。その中でも、各学年で少なくとも1回は行われ、子どもについて個人的な話ができる三者面談は、保護者にとっても、また教員にとっても最も重要視されるものであろう。

保護者の参加が極端に少ないのはなぜか

しかし、都市近郊の「教育困難校」では、これらの行事に関して保護者の参加が極端に少ない。入学式、卒業式など節目の行事でも保護者の半数が参加すれば良いほうである。高校卒業後の進路目標を決めるために最も重要な3年1学期の三者面談でさえ、保護者は積極的に参加しようとしない。そんな保護者に何とか来校してもらうために教員は非常に苦労する。保護者の都合に合わせて、土日に1組の面談のためだけに出勤することや、平日夜8時頃から数組の面談を行うことも珍しくない。

学校行事への不参加の理由は、仕事の都合がつかないというものが最も多い。一人親世帯が多く、また非正規労働、しかもシフト制で働いている場合も多いので、確かに学校が開いている時間、つまり教師の勤務時間には思うように時間が取れないということもあるだろう。だが、保護者の行動の優先順位の中で、学校行事は決して高くないことも事実である。それは、子への関心度の低さが影響しているのではないか。

一方、地方の「教育困難校」では学校行事の参加率は比較的高い。入学式や卒業式の保護者参加率はほぼ100%、親が出られないと祖父母が参加する家庭もある。

子への関心の高さは、通学時にも表れる。地方の「教育困難校」は鉄道やバスの便が悪い場所にあることがほとんどなので自転車通学者が多いが、家族に自家用車で送迎してもらっている生徒も少なくない。毎日、学校が終わる時刻になると親や祖父母の運転する自動車が校門の前に列をなす。悪天候の日にはその台数は一層増える。

なかには、農作業の途中で時間に合わせてやってきたのか、荷台に野菜を満載した軽トラックが並んでいることもある。校門を出た生徒たちが友達に口々に別れを告げ、家族の待つ車に駆け寄っていき、校門指導にあたっている教員と保護者があいさつを交わす姿は、地方ではよく見られる光景である。家族で高校生の学校生活を支える体制ができていることを、強く感じる。

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