世界を揺さぶるトランプ金融規制緩和の衝撃 リスクマネーの膨張はバブルを招きかねない

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さまざまな分野でバブルが起きてリスクが高まる……
リーマンショックの発端になったのは、RMBS(住宅ローン担保証券)といった信用市場の「証券化商品」のバブルだった。リスクマネーの投資対象は、本来、投資対象になりにくいレアなマーケットにも向かうことが多く、そういう意味では予想できない分野でバブルが起き、そのバブルが崩壊して世界中が大不況になる。17世紀にオランダで起きた「チューリップ恐慌」は、まさにチューリップの球根が投資対象になった。
流動性の枯渇が暴落を誘発する……
リスクマネーは、レバレッジをかけて特定の資産に大量投資する。その反面、何か変化があると一斉に資金を引き揚げる傾向がある。言い換えれば、流動性が枯渇しやすく、暴落が起きやすくなる。特定の市場で大暴落が起こると、そこに投資していた金融機関などが経営危機に陥りやすくなり、やがて世界的な規模で金融機関の経営破綻が連鎖していく。トランプ政権は、金融機関の救済はしないと宣言しているから、事態が悪化すれば1930年代の大恐慌が再現するかもしれない。
新興国のデフォルトを誘引する……
リスクマネーは、資金の行き場に困って新興国への投資に向かう。新興国は簡単にバブルをつくるが、何かあった場合、リスクマネーはすぐに安全資産に逃避する。結果的に新興国のソブリン債などが一斉に売られて流動性が枯渇。デフォルト(債務不履行)を起こし世界をパニックに陥れる。デフォルトが相次いだ1970年代の中南米が再現されるかもしれない。

その末路を見通すことができるのか

トランプ大統領は、相変わらず迷走し、メディア批判など敵をつくることで自分への攻撃をかわそうとしている。今回のドッド・フランク法の見直しも、彼自身は中小企業への融資が拡大し景気が拡大するだろう、といった程度の認識しかないのかもしれない。

現在はリーマンショック以降、米国、欧州、日本などが実施してきた金融緩和政策や量的緩和政策などの影響で、金融市場は史上空前のカネ余り状態。世界の株式市場の時価総額の半分以上を抱える超経済大国である米国が、金融機関の自由な取引を許せばどういうことになるのか。

トランプ政権には、その末路をアドバイスできるスタッフがいないのかもしれない。黙殺して、自分自身の利益を目指す閣僚ばかりでないことを祈るばかりだ。

ちなみに、日本への影響も計り知れない。メガバンクなど国際的な活動をしている金融機関はバブル崩壊のリスクを背負い、日本国内でも不動産バブルなどが再燃する可能性が高い。リーマンショック以後、自己資本の増強などを図ってきたが、そうした枠を超えるショックが起きたときどうなるのか。アベノミクスによるマイナス金利もどうなるか。米国のバブルは金利高を招き、テーパリング(量的金融緩和の縮小)を招く。

かつて「ドイツ民族ファースト」を連呼したヒトラー政権はやがて戦争に突入していった。このままトランプ政権が続けば、米国の暴走は誰にも制止できなくなるかもしれない。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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