世界を揺さぶるトランプ金融規制緩和の衝撃 リスクマネーの膨張はバブルを招きかねない
レバレッジを効かせて少ない資金を元手に多額の資産を運用するため、実際に取引される資産の総量はこの数倍以上に達しているといわれる。ヘッジファンドに投資銀行の自己勘定分などを合わせた「リスクマネー」全体の総額は、リーマンショック直前には62兆ドル(想定元本、ISDA調べ、デリバティブ取引の総量)にも達したとされている。リスクの高い取引を制限しているドッド・フランク法の制定以来、こうしたリスクマネー全体の伸びは当然鈍化しつつあった。
最近もヒラリー・クリントンの娘婿が運用するヘッジファンドが解散したと報じられるなど、ヘッジファンドの成績は停滞ぎみだ。その背景には、レバレッジをかける際に資金提供してくれる銀行が、高リスクの運用を制限されているために資金源が細くなっているのではないかという見方がある。
雑誌『フォーチュン』によると、ヘッジファンドによる寄付金が大きく増えており、2008年の大統領選挙に比べて35%増、8億ドル近い金額に達しているそうだ。そのうち6割の寄付金が、ドッド・フランク法に反対していた共和党に集まったとされる。今回の選挙では、ジョージ・ソロスのように民主党を支持して1190万ドルの寄付をしたにもかかわらず、トランプ氏が大統領選挙に勝利して莫大な損失を被った人もいる。
いずれにしても、共和党が同意していることを考えると、トランプ政権がドッド・フランク法を骨抜きにして、再び自由な金融取引ができる可能性が高い。ムニューチン財務大臣は、ウォール街の利益の代弁者であることを考えれば、いずれは考えを翻してボルカールールの見直しに積極的になる可能性も十分考えられる。
世界中にバブルが蔓延し、やがて崩壊を招く?
さて、問題はドッド・フランク法の見直しによって何が起こるのかだ。
米国が金融規制を緩和することで最も大きな影響が出ると考えられるのは、やはりヘッジファンドや銀行の自己勘定取引といった「リスクマネー」の動きだ。積極的にリスクを取ってリターンを狙うのがリスクマネーの定義だが、その存在は、金融市場の動きを支配するだけでなく、経済全体も左右することになる。簡単に、その特徴を挙げると――。
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