世界を揺さぶるトランプ金融規制緩和の衝撃 リスクマネーの膨張はバブルを招きかねない

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共和党も、トランプが大統領に選出される前の共和党大会で、ドッド・フランク法の見直しを決議しており、共和党政権にとってもこの大統領令は既定路線だったといえる。

しかし、ドッド・フランク法の見直しは、かつてのバブル経済を再度演出する可能性がある。米国経済にバブルを発生させて、不動産価格をつり上げ、インフレをもたらそうとする意図が見え隠れする。当然ながら日本経済にも多大な影響をもたらすはずだ。

少ない資金で大きく投資する時代に逆戻り?

もともと大統領選中は「反ウォール街」で、行き過ぎたグローバリズムなどに反対していたはずだが、その一方で金融取引を中心とした金融資本主義に対しては市場の自由に任せたいという「矛盾した政策」を示していた。それがトランプ流といえばそれまでなのだが、ドッド・フランク法の中核といわれる「ボルカールール」の緩和を進めていくようなら、世界はまたリーマンショック以前に戻る可能性がある。

ドッド・フランク法の内容は全部で16編、2000ページ超にわたっており、最後に追加されたボルカールール以外にも多岐にわたって細かく規定されている。簡単にピックアップすると次のような内容になる。

●大規模金融機関に対する規制強化
●金融機関の破綻ルールの策定
●金融システムの安定を監視する「FSOC(金融安定評議会)」の設置
●経営者への報酬に対する監視強化
●金融市場の包括的な規制(デリバティブ取引等の透明性向上)
●消費者保護の改革(消費者金融保護局(CFPB)の設置)

複雑で厳しすぎるという批判は制定当初からささやかれていたことだが、これらの中でも特に問題になっているのが、大手銀行の活動を厳しく規制していることだ。住宅バブルをつくり、リーマンショックの原因をつくったとされる元FRB議長のアラン・グリーンスパン氏も、ドッド・フランク法を「悲惨な過ち」と呼んで「消え去れるのが楽しみだ」と語ったと報道されている。

ボルカールールの主旨は「銀行は高いリスクを取るべきではない」という考えで、自己勘定取引やヘッジファンドなどへの投資を禁止している。ただし、マーケットメイク(値付け取引)や顧客のリスク回避のためのヘッジ取引、さらに米国国債や政府機関債、地方債、外国国債の一部などについては例外となっている。いずれにしても、高いリスクをとって大きな収益を狙う取引は制限されている状態だ。

大統領令は、このボルカールールの撤廃が狙いと思われているものの、ゴールドマンサックスの元パートナー(共同経営者)だったムニューチン財務長官は「ボルカールールを支持する」とコメントしており、先行きは不透明だ。

たとえば、ドッド・フランク法の中には積極的な運用手法で知られる「ヘッジファンド」への出資規制が盛り込まれている。ヘッジファンドは、2008年のリーマンショックを契機に資産残高を大きく減少させたものの、2010年にはリーマンショック以前に回復。ヘッジファンドの情報収集会社である「ヘッジ・ファンド・リサーチ(HFR)」の調査によると、現在の運用資産総額は2兆8600億ドル(約320兆円、2016年11月30日現在)に達している。

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