サムスンは「トップ逮捕」でどこへ向かうのか 今後の経営は?想定される3つのシナリオ

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しかし、このシナリオには大きな欠点がある。社長団協議体のような集団指導体制になると、挑戦的な経営を避ける傾向が出てしまうのがサムスンの特徴だ。

2008年にも、当時は新規事業だった太陽光パネルやLEDなどいくつかの事業において、サムスンがライバル企業に押されてしまう問題が生じた。アップルがiPhoneを投入した際にも、スマートフォンへの転換が遅れ、ライバル企業よりも3〜4年遅れてこの分野に進出している。この決断の遅れこそが2010年3月に李会長が経営に復帰する要因となった。李会長復帰の翌年にサムスンは「ギャラクシーノート」を投入し、主要企業としての座をつかんでいる。

ある財界関係者は「既存の事業を発展させることにおいては、現在の専門経営者らの力量が優れている。しかし彼らは大規模な投資の決定、新事業進出という選択を迫られると躊躇しがちだ」と言う。さらに、「タイムリーな投資判断、外国企業などのM&Aなどの事案を決定する際には、彼ら専門経営者による経営には限界がある」と付け加える。

未来戦略室にも不安材料

そこで2つ目のシナリオが有力になる。グループの核となる未来戦略室が、一定期間は李副会長の役割を代替しうるというものだ。李副会長が2016年末、崔順実氏による国政不正介入事件の参考人として国会の聴聞会の場で未来戦略室の解体を約束したが、当面は維持されるとの見方も出ている。

しかし、未来戦略室が実質的なグループの司令塔となるには不安がある。未来戦略室のトップであるチェ・ジソン室長(副会長)とチャン・チュンギ次長も、李副会長とともに贈賄容疑で起訴される見通しであるためだ。

グループ内の主要企業であるサムスン電子の経営においては、現在のような危機的状況においても組織が回る体制ができている。サムスン電子の意志決定過程は、李副会長→未来戦略室→グループ会社代表などによる調整を経て行われるが、このうちグループ会社代表によるリーダーシップはこれまでと同様に問題がない。

金融界では、3つ目のシナリオもささやかれている。李副会長の不在をオーナー一族で李副会長の妹である李富眞(イ・プジン)ホテル新羅社長が行うのではないかとの観測だ。

とはいえ、これは可能性が低いシナリオというのが、財界の大方の見方である。サムスン電子の株式を保有していない李社長が経営に参加する大義名分がないうえに、李社長がこれまでグループ内で責任ある職に就いたことがないというのがその理由だ。

この混乱は、サムスンに何をもたらすだろうか。

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