形だけの長時間労働規制は、害悪でしかない まずは「実労働時間の把握」を徹底すべきだ

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また、深夜の連絡や納期の短い業務など、客先からの依頼に対して断るケースもあるでしょう。現場で対応できるならばよいのですが、難しいケースでは経営トップが客先に対して理解を求める姿勢も必要です。その意味で、「責任を持つ」ということが重要になります。そのうえで、②のように今後はやらない仕事や客先に対して断るラインの設定を行う必要があるのです。

次に、管理職などのマネジメント職において重要な視点を2つ述べます。それは、①現場の判断に任せきらないことと、②人事考課です。

まず、プロジェクトや現場レベルにおいて、業務改善を進めていくわけですが、その中でも「やらなくてもよい仕事」はマネジメント職の責任で判断します。これを現場に判断させてはうまくいきません。もちろんささいなことまで口を出しすぎてもよくないですが、少なくとも「数字は今までどおり上げろ、でも時間は減らせ」では間違いなく失敗するでしょう。そのためには、「やらなくてもよい業務」を自己の責任で判断するのがマネジメント職の役割だと思います。

長時間労働は評価基準から外せ

また、②について、人事考課における評価項目から、長時間労働を「形式的にも、内心的にも」から外しましょう。特に内心の部分です。「あいつはいつも頑張っているから偉い」などと長時間労働で評価するのはマネジメント層にとっては楽な評価方法です。しかし、本気で長時間労働削減を行うのであればそうはいきません。むしろ、本当に成果や貢献度合い、努力の程度を見る必要があります。これは部下をよく見る必要があるので非常に大変です。まさに、一人ひとりを適切に「マネジメント」する必要があるのですが、やはり本気で改革をするのであればここは避けて通れません。

残業削減策として、「ノー残業デー」や「朝型勤務」などの人事施策がみられます。最近では、月末の金曜日には午後3時をメドに退社を促し、消費を喚起する施策である、「プレミアムフライデー」というものもあるでしょう。ただし、これらはあくまで補助的な位置づけとして考えるべきです。

そもそも、水曜をノー残業デーにしても、火曜日・木曜日の残業が増えたり、朝早く来て帰る時間は遅い、ではまったく意味がありません。これらは根本的な業務効率化や軽減が終わった後、「これまでとは違って、早く帰れる」という雰囲気を醸成するという目的で用いるものであり、これらの制度導入それ自体が目的であってはならないのです。

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