先進国が貿易政策を変えるには、グローバル化自体が別の観点から大きな構造変化のただ中にあることへの理解も肝要だ。
世界金融危機以降、国境を越えた資本移動が急減し、銀行は新規制下で業容を縮小した。90~07年に世界の貿易規模はGDPの伸びの2倍の速さで成長したが、10年以降の貿易の伸びはGDPのそれを下回っている。
投資は数年間冷え込み、中国経済は減速した。こうした流れは変わりそうにない。世界の貿易規模が今後、急拡大するとは考えにくい。
もっともグローバル化が後退しているわけではない。デジタル面では加速の一途である。国境を越えたデータ流通規模は05年比で45倍に拡大し、今後5年間でさらに今の9倍の規模にまで広がると見込まれる。
個人が「多国籍企業」になれる時代
このデジタル面のグローバル化は知識集約的で、参入障壁を下げ、ビジネスのルールに変革を迫る。
かつて中小企業にとっては、国際的な事業環境を正確に把握して必要な書類を整え、輸出を行うことのハードルは高かった。しかし現在では個人事業主でさえ、アリババやアマゾンなどのデジタルプラットフォームを使えば、世界中の顧客やサプライヤーと直接つながる「マイクロ多国籍企業」になれる。
フェイスブックの推計によると、同社のサービスを使っている中小企業数は現在約5000万社と、13年時点の2倍に達した。このうち3割は米国外の企業である。
デジタル技術は中小企業や個人が世界経済に参入するのを可能にする。加えて彼らの活躍を後押しするには一定の政策が必要である。
米国はTPP(環太平洋経済連携協定)の離脱決定に伴い、知的財産保護や国境を越えたデータ流通などに関する21世紀のデジタル貿易の新たな原則を確立する必要がある。
同時に先進国は、デジタル時代に必要な技能を労働者が取得するのを支援しなければならない。グローバル化に取り残された個人のニーズへの対応も不可欠だ。重要なのはデジタル面でのグローバル化に人々がついていけるよう措置を講じることだ。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら