サトウvs越後、切り餅訴訟が“飛び火" 業界3位、きむら食品も巻き込まれる

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問題の特許は切り餅の表面に入っている切り込みに関するもので、上図の通り、越後は側面周囲に1本のスリットを入れている。サトウ食品は上下面に十字、大きい側面にもスリットを入れた形態で特許も取得している。

サトウ食品側の主張では、2002年10月21日から約1カ月間、上下面十字プラス側面1本のスリットが入った餅を販売。同年11月下旬以降は生産現場が混乱したことからいったん上下面十字スリットのみの生産に切り替え、2003年にあらためて上下面十字プラス側面2本スリットの餅の生産を始めたという。

だが、知財高裁の中間判決後、サトウ食品は順次、上下面十字のみの製造に切り替え、2012年春には流通段階でもほぼ旧型商品は姿を消している。

証拠捏造疑われ、完敗したサトウの1次訴訟

きむら食品の旧型製品の様態はサトウの旧型とよく似ているが、側面のスリットは2本ではなく1本。きむら食品も越後製菓から提訴される可能性を察知した昨年秋頃から、順次側面スリットなしの製品に切り替え、現在では側面スリット入りは生産していない。

大手4社のうち唯一、スリットなしの製品を製造販売しているのがたいまつ食品。スリットを入れたら売り上げが伸びるとも思えないし、実際4社中3社がスリット入りを投入しても、たいまつ食品の売上高は落ちておらず、OEM供給する際も供給先からスリットを入れることを求められたことはない、というのがたいまつ食品のスタンスだ。

略年表の通り、特許の取得自体はサトウ食品のほうが圧倒的に早いが、特許申請手続きにおける、ずさんさが知財高裁の判断では災いした。1審段階での立証活動も不充分だったため、ほぼ1審の記録を基に出された知財高裁の中間判決では、証拠として提出した餅を裁判官から偽造だと疑われる始末。このことが、裁判官の心証に大きく影響を与えた可能性は否定できない。

中間判決の制度は、複数の争点が存在する事案の場合、争点の一部について裁判所が途中の段階で判断を出す手続きだ。本件1次訴訟では中間判決でサトウ食品の特許侵害を認め、最終判決で損害額の判断を下している。

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