サトウvs越後、切り餅訴訟が“飛び火" 業界3位、きむら食品も巻き込まれる
上下面十字のスリットが入っていたことに争いの余地はないが、側面にも入っていたかどうかが重要な争点になっている。サトウ食品では、1カ月で側面スリットを止めたのは生産現場の混乱などが理由だとも主張している。
1次訴訟の2審終盤では、木村氏だけでなく、同じく競合他社のたいまつ食品代表の樋口元剛氏が、2002年10月21日にイトーヨーカドーで研究のためにサトウ食品の餅を購入し、確かに側面にもスリットが入っていたという陳述書を提出。同じものは当然、サトウ食品の2次訴訟でも証拠として提出されている。
木村氏が、越後製菓の山崎彬会長と星野一郎取締役(当時。現社長)から呼び出しを受け、この陳述書を撤回するか、あるいはあいまいな記憶に基づく陳述であるということを追加で主張してほしいという依頼を受けたのは、サトウ食品の1次訴訟の2審最終判決が出た4日後の2012年3月26日だという。
この場で木村氏は、「陳述書の撤回も、あいまいな記憶に基づく陳述だったという主張の追加も拒否し、念のため側面スリットを自社の餅に入れ続けることに問題はないかどうか確認もしたが、問題はないと言われた」という。この時点では「もの言いもまだソフトだった」と木村氏は振り返る。
状況が一変するのは約2カ月後の5月14日。木村氏は業者間の会合の場で星野氏に呼び止められ、あらためて来社するよう求められた。実際に出向いてみると、山崎氏から「陳述書の撤回かあいまいな記憶に基づく陳述だという主張の追加のいずれかを飲まなければ、20億円程度の損害賠償を検討する、と強い調子で通告された」(木村氏)という。
直近年商の6割相当を損害賠償請求
それから4カ月以上が経過した2012年10月、特許実施料の支払いを求める内容証明が、越後製菓の地元・長岡の弁護士から届く。
きむら食品が県餅工から実施許諾を受けている特許は、サトウ食品の特許ではあるが、実施許諾の決定は県餅工の理事会の全会一致で決議されていた。その理事会のメンバーは、サトウ食品の佐藤功会長、越後製菓の星野一郎取締役(当時)、きむら食品の木村金也社長、たいまつ食品の樋口元剛社長、それに事務局担当の専務理事の合計5名だった。
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