鳥貴族だけが激安・均一戦争に大勝した意味 大手居酒屋優位の構造はこうして変わった

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平林は厨房革新、店舗運営のIT化を準備したうえで、2009年5月に全品300円均一の「居酒屋300 金の蔵Jr.」池袋ヒューマックス店をオープンした。次に同6月に全品299円均一の「居酒屋299 金の蔵Jr.」渋谷宇田川町店を開く。そして同8月には「東方見聞録」錦糸町店(213席。現在は閉店)を「全品270円均一」業態に転換した。

平林は低価格・均一価格の居酒屋業態を開発する際、サイゼリヤの創業者で会長である正垣泰彦のアドバイスを受けたという。サイゼリヤは厨房に包丁を置かずに調理できるという、外食業界で最も厨房革命の進んだ企業だ。平林は正垣の教えから学び、店舗運営の効率化・システム化を徹底的に図った。

たとえばタッチパネル。これによって「接客なし」「料金計算なし」「人件費削減」が実現できる。英語、中国語、韓国語などにも対応するのでアルバイトなどに雇用した外国人にも、タッチパネルを介して指導できる。

仕込みの手間も省いた

次に、「仕込みレス」(卸業者を活用した納品で調理場の仕込み作業なし)だ。調理人は店が始まる前の早い時間に出勤し、料理の仕込みをするのが仕事だが、卸業者の段階で仕込みまで行うようにして、調理人の仕込みの手間を省いた。

そして最新鋭の厨房機器の導入である。最新の調理万能機械は揚げる・炒める・煮ることができる。ご飯や具などを規定量入れるだけで、おいしいチャーハンがあっという間に完成する。このほか焼き鳥を焼く串焼きロボット、風味を逃がさないジェットオーブンなどの導入によって、それまで5人必要だった厨房の人員は2~3人削減できることになった。30%かかっていた人件費比率は25%まで下げられた。

筆者は当時、取材に飛び回って、「夕刊フジ」「日刊ゲンダイ」などに連載記事を書いた。三光MFの「全品270円均一」業態にも3回取材に訪れた。開店直後の池袋の大型店に入った時には、無線マイクを着用したホールの社員が、店長・厨房長らと連絡を取り合って席に案内してくれた。

客席にはタッチパネルが置いてあるほかにはおしぼり、ハシ、小皿、調味料などのセットなどが備えてあった。タッチパネルで注文すると、しばらくして従業員が飲料・料理を運んでくるというシステムだ。接客サービスなし。ただ個室居酒屋「東方見聞録」から転換した店内は薄暗い照明のうえに200席を超すような広さは、「全品270円均一」の大衆的居酒屋と呼びにくい雰囲気だった。

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