街づくりは「武蔵小杉化」だけが正解ではない 「スペック」で測れない街の魅力があるはずだ
三浦:こうして武蔵小杉の人気が上がって、人口自然増によって川崎市の人口増加を牽引した。この実績があると、やっぱり自治体の首長は、タワーマンションをぼこぼこ建てれば、若くて担税力のある人が集まるから、やめられないなって思っちゃうね。
島原:多分同じようなことが言えるのは、横浜みなとみらいなんですよ。三浦さんの本では、住みたい街ランキングの総合1位が横浜みなとみらいでした。特に女性には年代を問わずに人気があって、ここまでかというのに僕は驚いた。みなとみらいも、武蔵小杉と似た「アトム的な街」(漫画『鉄腕アトム』に出てくるような、高層ビル群や高速道路などが走る近代的な都市のこと。三浦展『新東京風景論』参照)。タワーマンションが沢山あって、非常に区画が大きく、車道が広い。
ただ、どこかに行こうとしても、まちづくりの計画通りの道を通らないと、ものすごく歩きにくいですよね。そこに行くだけなのに歩道橋を渡るんですか、というところもあって。
三浦:やっぱり、街の魅力って、近代的で、かっこいいマンションが建っているとかだけではなく、外を歩いていて気持ちがいいとか、「スペック」で測れない感覚的な部分もあるよね。
従来の都市ランキングへの違和感
島原:そうなんです。ここに、今回僕とHOME’S総研が「Sensuous city(官能都市)ランキング」を発表したきっかけがあります
「官能」というと、「官能小説」のようなエロティックなイメージで誤解されることもあるのですが、本来は、五感に訴えるとか、感覚的な、といった意味の言葉です。これを言葉に表して、指標として街を評価したのが、このランキングです。
世の中には、都市の評価をするランキングがいくつもあります。代表格は、不動産情報サービスのSUUMOがやっている「住みたい街ランキング」。私のいるHOME’Sもやっているし、東洋経済も「住みよさランキング」を出していますね。
ただ、これがどのような指標に基づいて算出されているのかというと、案外インフラというか、ハードウエアの充実度が多くのウエートを占めていることが多い。たとえば、東洋経済の「住みよさランキング」なら、人口当たり病院の数が多いほど安心だ、人口当たり小売店の面積が広ければ利便度が高い、といった具合です。
実際に自分が「この街、いいな」と実感して、住んだり遊んだりしている街が、こうしたランキングでなかなか上位に来ないんですね。