激震!「ワセダクロニクル」スクープの舞台裏 渡辺周編集長が語る「調査報道への覚悟」
――早稲田大学ジャーナリズム研究所との関係は?
朝日新聞社時代に花田さんや野中章弘さんの授業に講師として参加したことが縁。朝日の先輩が招聘研究員をやっているなど知り合いもいたので、この研究所で調査報道プロジェクトを進めていくことにしました。ただし、大学当局が報道内容に関係しているわけではなく、あくまで独立のプロジェクト。すべての責任は編集長である私が負うという体を取っています。
大学からは金銭的にも独立しています。学生も授業として参加しているわけではないので、授業料などの収入があるわけでもない。独立したプロジェクトとして大学の研究所に間借りをさせていただいている、という形です。現在の事務所も、研究員の何人かでおカネを出し合って大学の施設を借りています。
――学生にとっては学ぶところが多いでしょうが、調査報道という性格上、危険な目に遭うかもしれない。
学生には情報公開請求の手法、取材先の探し方、交渉の仕方、アポイントメントの取り方、資料の読み方などはすべて教えます。しかし、地上戦、つまり批判対象への取材には参加させません。おっしゃるようなリスクは確かにあるわけです。そこはプロがやるべきであり、明確に線引きをしています。
ここでジャーナリズムの基礎を学んだ学生は、社会に出てメディアに就職する場合もあれば、フリージャーナリストとして活躍する場合もあると思いますが、いつかはここに戻ってきて、取材の経験を学生たちに還元していく――そんな循環をつくれれば、と考えています。
寄付モデルで成り立つようにしたい
――クラウドファンディングによって寄付金を集めていますが、事業として継続していく場合に不安を感じませんか。広告を取る予定は?
甘いといわれるかもしれませんが、あらゆる利害関係から独立した立場でいたいので広告は集めません。実際、諸外国では寄付モデルが成り立っています。米国では「プロパブリカ」があり、日本でも比較的知られていると思います。
ただ、私がいちばん感銘を受けたのは韓国にある「ニュース打破(タパ)」です。これは2012年、元テレビ局の記者が集まってつくった調査報道のプロジェクト。権力の批判をしたことなどがもとで勤め先を首になったり干されたり、という人たちが集まって立ち上げた。彼らと話をしたのですが、もともとは「最後にひとつだけ大きな仕事をやろう」ということだったそうです。ところが最初の番組が高く評価され、寄付が集まった。そこから好循環が始まり、今では4万人以上の寄付会員がいるそうです。彼らは、寄付収入だけでやっている。韓国ではタパ以外にも寄付によって成り立っているニュースサイトがいくつかあります。
韓国と日本では、文化の違いはありますが、日本の人口は韓国の2倍。しかも日本ではわれわれが初めての寄付モデルのメディアです。そうであれば、多くの寄付会員を募ることも夢ではないと思っています。取らぬ狸の皮算用なのですが、ここに一縷(いちる)の望みを託しています。
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