スタバ、「利益好調でも債務超過」の驚愕事態 上場廃止後、いったい何があったのか

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こうして美しかったバランスシートは、かくも無惨な姿に変貌したわけだ。公開買付届出書で、米スタバ本社は150億円を出資するとしていたが実際に出資したのは29.5億円。仮に予定通りの金額を出資しても債務超過が解消された訳ではない。

実は債務超過を避ける方法もあった。今回はSBJを存続会社としたが、SPCのSolar を存続会社にすると債務超過にはならない。この場合、資産側に差額507億円をのれんとして計上することになる。

買われた会社とSPC、どちらを存続会社にするのかはケース・バイ・ケースだ。TSUTAYAで著名なカルチュア・コンビニエンス・クラブはSBJ同様、買われた会社本体が存続会社になっているが、ツバキ・ナカシマやすかいらーくはSPCが存続会社で、多額ののれんを抱えて再上場を果たしている。 

債務超過が意味するもの

2社ともIFRS(国際会計基準)を採用しているので、のれん償却の必要がない。要は、存続会社を変えただけで、多額ののれんで見た目の純資産を大幅に底上げできるのだ。

転売したり再上場したり、買収者が後年再び買った会社を手放すことを前提にしている場合は、基本的にSPCを存続会社にする処理を選ぶ。その方がバランスシートの見栄えがいい。買収にかかった負債は買った会社にツケを回すので、買収者は自らが出資した金額以上で売れればキャピタルゲインが得られる。

ひとたび完全子会社化してしまえば、会社は誰の目にも触れなくなる。そもそも決算公告義務の履行をやめてしまえば、上場廃止後に何が起きているのか、部外者が気づく機会もなくなる。

その点、SBJは律儀に決算公告義務を守り続けているが、そのバランスシートが物語るのは、米スタバ本社の子会社化による現実だ。

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