なぜ再燃?各地で「社歌」が盛り上がるワケ ハードメタルからロック、ラップまで!

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長山さんのその奇抜なアイデアは、あるパン工場でおいしいパンをつくるために、クラシック音楽を流して酵母を聴育している、という報道を目にしたことから生まれた。鉄分が豊富な小松菜に、勢いのあるメタル音楽を聴かせたら、味や鉄分量に変化が出るのではと考えたのだ。

「メタル小松菜」の誕生

昨年1月から小松菜の聴育をスタートし、3月に「メタル小松菜」が誕生。初出荷を迎えるにあたり、味の違いなどをチェックした長山さんだったが、聴育の成果は「まるでなし」。「科学的な根拠なしに意気込みだけで始めた」だけに、当然といえば当然の結果といえど、「メタルを聴かせる前後で違いがまるでないことに衝撃を受けた」という。

ところが、メタルを聴いて育った「メタル小松菜」の存在が明らかになると、とたんにネットで話題になり、問い合わせが殺到。科学的根拠よりも、メタル音楽を聴いて育ったという事実、そこから生まれる「勢いのある生産者が作った、生きのいい小松菜」というイメージが、消費者を惹き付けたのだろう。

「メタル社歌」や「メタル小松菜」などで自社ブランディングを仕掛け、農業革命を起こしたいと話す、ベジフルファーム代表取締役の田中健二さん(右)と長山さん(写真:ベジフルファーム提供)

ベジフルファームでは、これを境に、卸向けだった小松菜を一般消費者向けにも販売をスタート。今も「メタル小松菜」は人気で、ネット注文が絶えない。

「日本農業の課題の1つは、生産者に価格決定権がないことです。かつては良いものを作れば誰かが見つけてくれたけど、今はそんな甘い業界じゃない。社歌でも何でもいいから情報発信してほしい。そうすることで自社ブランドが確立し、価格も商品も自分たちが納得するものを市場に出せるようになる。それが、従業員の意識変革にもつながり、妥協なき生産につながる。良質なスパイラルが生まれるんです。

農家自身が自社ブランドを築き、価格決定権を得なければ 日本農業は消滅すると思っています。社歌はきっかけにすぎません。『農家よ、後に続け』という思いです」

そこには、農業革命を本気で目指すベジフルファームの決意と、その“想いを社会に届けたい”という強い気持ちが込められている。

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