このように、長時間労働の総量に上限を設ける「総量規制」のほかに、当日の勤務と翌日の勤務の間に一定時間を置かなければならないとする「インターバル規制」(たとえば、10時間インターバルの場合、深夜0時まで仕事をした場合、翌朝の出社は午前10時からとする)なども検討されています。
これらの「総量規制」や「インターバル規制」は、心身の健康確保のために、一定の意義はあるでしょうから、筆者個人としても一概にその効果を否定するものではありません。しかし、現在の労働時間をめぐる議論において、忘れられている視点があるように思えてならないのです。本記事ではその点について解説します。
持ち帰り残業や隠れ残業が増えるだけ
まずは、長時間労働規制だけで本当によいのか、という問題です。そもそも、規制ばかり強めても、本来的な業務の進め方が効率化されなければ、サービス残業などが増えるだけです。本気で長時間労働をなくすということであれば、業務のあり方、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)の仕方、会議のあり方、客先との関係など、すべてを見直す必要があります。
長時間労働規制がなされたから「残業を減らせ」と上から号令をかけるだけでは、何も改善されないでしょう。これまでどおりの働き方をしていたのでは労働時間が追いつかない場合、「何をあきらめるのか」「何をしないのか」という視点が重要になってきます。単純に「規制を守れ!」と締めつけるだけでは持ち帰り残業や隠れ残業が増えるだけで、かえって効率が悪化する結果となります。
次は、「生産性」とは何か、という問題です。最近よく議論されているのが「生産性を上げて労働時間を短縮しよう」という動きです。つまり、働く時間を減らす代わりに、1時間当たりの成果をより多くしようということです。もちろん、これまで社内会議や社内向けの報告書・稟議書・企画書などを時間をかけて作成するなど、無駄が多い職場においては改善する余地はそうとうあるでしょう。
しかし、製造業の現場など、すでに生産性改善がかなり工夫され尽くしており、これ以上の改善は難しい現場もあります。また、ホワイトカラーにおいては、若い時代などに多くの経験をこなすことにより、職務遂行能力・スキルが身に付く関係にあるため、長時間労働ができない中でそもそもどうやって生産性を上げるのかについては、根本的にスキルアップの方法にまで踏み込んで検討を行う必要があります。
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