東芝「解体」だけでは抜け出せない巨艦の窮地 「聖域」の原子力はそれでもやめられない
東芝全社の利益の大半を稼ぎ出すメモリ事業の価値はアナリストの間では1兆円とも2兆円ともいわれる。分社化した会社の株式20%を売り出せば数千億円のカネに換えられる。綱川社長がメモリ事業の分社化の背景を「大規模投資を適時行える体制作りと資本増強をする必要性がある」と説明したように、20%売却がどのくらい資本増強に寄与するかは不明だが、崖っ縁にある財務状況を救うほぼ唯一の手段であることは間違いない。
過去にもメモリ事業の分社化、外部資本の導入は検討されてきた。だが、東芝の連結収益の流出につながるため実行されずに来た。今になって決断したのは、それだけ追い込まれたからである。窮地に陥った東芝が迫られるリストラ策はこの分社化だけで終わらない。週刊東洋経済2月4日号(1月30日発売)は『東芝解体』を特集。原子力から莫大な損失が噴きだした背景を探り、今後想定される解体シナリオを3つに分けて検証した。
売却は間に合うか?足元を見られる懸念
東芝は1月18日に分社化の検討を発表しており、買い手候補のヒアリングも水面下では始まっている。キヤノンや世界最大のEMSでシャープを買収した鴻海精密工業など関心があることを表明した会社もある。メモリ事業で東芝と提携している米ウエスタンデジタル(WD)や投資ファンドの名前も挙がっている。
新会社に切り出すのは、スマートフォンなどに使われるNAND型フラッシュメモリ事業。近年ではNANDを使用したソリッド・ステート・ドライブ(SSD)が、ハードディスク駆動装置(HDD)に換わり、パソコンやデータセンター用大型記憶装置向けに需要が急増している。IoT(モノのインターネット)時代で増加するデータのキーデバイスとして成長期待が高い。韓国サムスン電子に続く世界2位に付ける東芝の同事業への評価は高い。
ただ、「関心を持つ」のと「実際にカネを出す」のとは別の話だ。東芝はメモリ事業の主導権を維持するために今回は新会社株式の売却を20%弱にとどめる。買い手にとって巨額投資に見合う案件かどうかは微妙だ。「メモリ事業はボラティリティ(変動リスク)が大きく、巨額の設備投資を継続しなくてはならない。出資するには相当な覚悟がいる」と大手外資系ファンドの幹部は率直に語る。「反面、(過半数を取れない)マイナー出資だと自由に経営できないためやりにくい」ということもある。
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