「生涯未婚」の原因は、本当におカネの問題か 「中間層」が消滅しても変わらない男女の意識

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天野氏のレポートでも触れられているが、明治安田生活福祉研究所が行った最新調査(「2016年 20~40代の恋愛と結婚」)で、20代から40代の男女が「結婚生活を送るために最低必要だと思う世帯年収」の回答が示されているのだが、これを見ると、実際に結婚生活をしている既婚者と、まだ結婚生活の経験がない未婚者の間に大きな開きがある。

既婚者の回答は、1位が400万〜500万円で23.5%、2位が300万〜400万円で21.1%。約半数弱が300万~500万円に収まっている。一方、未婚者は1位が400万〜500万円で23.6%と既婚者とほぼ変わらないのだが、2位が500万〜600万円で20.1%となっている。つまり、未婚者のほうが、既婚者よりも必要と思う年収ゾーンが約100万円ほど高い。

そして、未婚女性が相手に対して求める収入の額を見てみると、20代未婚女性の57.1%、30代未婚女性の67.9%が、結婚相手となる男性に対して最低400万円、またはそれ以上の年収を求めている。

つまり、未婚女性が男性側に求めている年収が400万円で、必要だと感じている「世帯年収」も400万~600万円ということになる。ということは、男性の稼ぎで生活を維持できることを期待している割合がかなり高い(個別の人の考え方については、もちろん別問題である)といえるだろう。「世帯年収」は共働きによって生み出してもよいはずだが、その負担が男性に偏る傾向は変わらないようだ。

「年収400万円」で足切りは、しんどい

しかし、現代における男性の収入は、以前と比べて厳しくなっていることは、客観的事実として指摘されている。厚生労働省が2015年に出した「賃金構造基本統計調査」では、40歳を超えた男性の賃金でも300万円強だ。これまでのような年功賃金の慣習が残る多くの会社では、結婚適齢期の20代の男性は、まだまだ賃金水準が高くないことがほとんどで、20〜24歳の役員ではない男性の賃金は、200万円超という数字も出ている。

1997年においては、20代の男性でも所得300万~400万円台の雇用者の割合が、約25%と最も多かった(総務省「就業構造基本調査」)が、現在では200万〜300万円台が主流になっていて、かつて存在した「分厚い中間層」は消滅している。結婚適齢期の男性に対して、「400万円」という足切りを課すことは、かなり高いハードルとなってしまう。しかし、男性もこの基準を前提にしてしまうと、「今のままの収入では結婚はムリ」と思い込んでしまい、悪い意味での幻想ができあがってくる。「女性が男性に現実を度外視した収入要求を持っており、未婚者は男女とも既婚者よりも生活に必要な収入額を大きくとらえてしまっている」というのが、天野氏の指摘だ。

「こうした風潮が続くと、男性は女性に選ばれる基準がおカネばかりだと思い込み、出会いの場に出向くことにさえ自信をもてなくなっているのではないでしょうか。結婚の問題は、経済的に大成功を収めれば解決するという問題ではなく、本来はコミュニケーション能力の問題であるということに気づいてほしい。男女ともおカネの問題を建前にして、まずは人間関係をきちんと築いていくことから逃げる傾向になってしまうならば問題です」(同)

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