イマドキ女子は「不安解消のため」風俗で働く

「ぜいたく」をしたいわけではない

「でも、生活は地味なまんま(笑)。ここでのお給料は、ほとんど貯金しています。500万円貯まったら辞めるつもりなんですが……。あればあるだけ不安が減るから、20代のうちは続けようかな」

一方で、彼女の同僚にあたるチヨリさん(22歳、仮名)は、自分のことを「貯金魔です」と言う。現在、大学4年生。今春には銀行に就職することが決まっている。小柄、色白、黒髪、瓜実顔でやや古風な顔立ちの彼女は、中年男性客から圧倒的な支持があるという。

「内定している会社の初任給は、手取りで22万円。広島ではかなり多いほうですよね。まさに、それこそが志望動機だったんです」

おっとりとした口調に、育ちのよさを感じる。そのまま本人に伝えると、「両親が厳しくて、大学生になっても門限は18時でした」と返ってきた。現在通っているのは、「家から近くて門限に間に合うから」という理由で、両親がチヨリさんの意見も聞かずに決めた大学だという。

「アルバイトも禁止されていました。でも私、10代のときから自分が稼げないということが不安で不安でたまらなかったんです。だから門限を破らず、しかも親に知られずにできるアルバイトは何だろうって友達に相談して、この仕事を教えてもらいました」

19歳でデリヘル嬢となった当初は、授業のない日の朝10時に出勤して日に6~7人こなすことを自分のノルマとしていたが、体調を崩したのを機に仕事をセーブすることにしたので、現在は平均して1日に3人程度。

「それでも一度出勤すれば、3万円は持って帰れます。退店したらその足でATMに行くんですよ。1万円はお財布に、もう1万円はカード引き落とし用の口座に、もう1万円は貯金用の口座に入れます」

おカネは何に使っていますか?と聞くと、「チョコレートが好きで……」というチヨリさん。ほほえましい回答に筆者が思わず笑うと、顔を赤くして「外国製のチョコレートですよ!」と付け加えたが、それにしても月に1万円以上を費やすわけではないだろう。前述のミチルさん同様、身ぎれいではあるものの美容やファッションに散財している様子もない。

「月に10万円は貯金したい」

学業にも就職活動にもデリヘルにもまじめに取り組んだ結果、卒業を間近に控えたチヨリさんの手元には、大手企業内定の切符と、300万円の貯金がある。経済力が欲しい、女性でも結婚や出産でキャリアを中断されることなく定年まで働きたい――春からは、彼女が思い描いたとおりの生活が待っている。晴れてデリヘル嬢のアルバイトも卒業、と思いきや……。

「月に10万円は貯金しようって決めています。でも、就職したら一人暮らしをする予定なんですよね。ずっと両親に縛られてきたけど、私が社会人になったら解放するって約束してくれたので。それはうれしいけど、お給料から家賃や生活費を出して、そのうえで10万円貯金っていうのは厳しそう……。身体を壊したりして働けなくなる可能性を考えると、なんとか1000万円は貯めたいんです。だから、銀行のお仕事のペースがつかめたら、無理のない範囲でこっちのアルバイトを再開したいです」

ミチルさんもチヨリさんも現在、恋人はいないが、結婚や出産は視野に入れている。しかし2人とも口をそろえて、「専業主婦はいや」「自分で稼いで、自分で使えるおカネがないのはコワイ」と言う。誰かに自分の人生を委ねるのはやはり「不安」らしい。

風俗業界の過当競争が始まって久しく、稼げる人と稼げない人との差は開いていくばかり。そんな中で若くて容姿に恵まれ、コミュニケーション能力も高いという“稼げる要素”を持った2人は明らかに有利であり、本人たちもそれを十分自覚している。

目標とする500万円、1000万円は確かに大きいが、それでも「将来の安心」を買える額ではない。しかし、当面の不安をいくばくかは減らしてくれる。そのために時間を割き、資質をフルに生かして彼女らはデリヘル嬢を副業のひとつとした。その勤勉といっていいほどの働きぶりに、かえって、彼女たちの「なんとなく」が漠然としていながらも、いかに大きいかがうかがえた。

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