日本の命運を握るトランプ政権「貿易3人組」 貿易上最大の「敵国」は日本ではないが…

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米国によるこうした「対抗策」は、より多くの国へ影響を与えることになる。「中国は貿易チームの3人組にとって、最も頭の痛い存在だろう」とプレストウィッツ氏は話す。「しかし日本、韓国、ドイツなどほかの国々との問題がないわけではない。通貨は重要な問題だ」。同氏は、国際通貨運営の新体系を作り出す試みとして、再びプラザ合意を行うことさえ検討されるかもしれない、と予見している。

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)のような多角的経済連携協定に関していえば、貿易3人組の関心は低い、というより、価値を見いだしていない。政権移行チームに近い情報筋によると、ナヴァロ氏らは、TPPが、中国の台頭を妨げる手段には決してならないと考えている。複数の情報筋によると、それよりは、日本などと新たに2国間の貿易協定を交渉するほうがより現実的のようだ。

キーパーソンはナヴァロ氏に

もちろん、トランプ新政権において、事態がどのように進むのかを予測しようとしても、予測不可能な要因が浮上する可能性は十分にある。しかし貿易・産業政策に関していえば、トランプ大統領は私が以前書いたとおり、1980年代に回帰することで一貫している。

この中で特にナヴァロ氏は、アジア政策に関しては、誰もが予想しているよりはるかに広範囲な役割を演じることになりそうだ。アジア政策に関して、同氏は中国に対する辛辣な批評家であり、太平洋上での広範囲に及ぶ米国の軍事増強を強く支持している。同氏はアジア関連の担当者の指名にはすべて関与する、といわれている。政権移行チームに近いある情報筋は、「トランプ政権ではナヴァロ氏が特に大きな影響力を持つだろう」とみている。

今、日本やアジアの企業やビジネスパーソンがやるべきことはひとつだ。日頃のビジネスの理想はひとまず脇に置いて、これから米国を率いることになるトランプ大統領と、貿易3人組が何をしようと考えているのか、それに対する理解を深める努力をするべきだろう。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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