「弱気レポート」に楽天が異例の反論 株価は割高と指摘するアナリストにかみついた。

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三菱側はレポートを修正

当該レポートが発行された後、楽天は三菱UFJモルガン・スタンレーに対し、レポートを修正するよう要請した。楽天が主張する論点は、業績の予想数値と株価の算定方法にある。

まず業績予想に関しては、「コスト予想をグループ合算ベースで行っているため、事業別の利益分析がほとんどなされていない」と主張。さらに「業績予想に用いられた法人税率の根拠が不明である」とした。また、株価の算定方法は、「ファイナンス理論の観点で誤っている」としている。これはつまり、荒木氏が算出する時価総額は、楽天の稼ぎ頭に育っている金融事業の収益性を正当に評価していないという意味だ。

こうした指摘を受け、荒木氏は7月1日にレポートの更新を行っている。コスト予想については従前と変更しなかったが、予想実効税率は前年度実績の57%から、特殊要因を除外した上で法人減税を織り込み38%に修正。結果、純益予想と一株純益予想を45%増額した。一方、株価の算定方法では、金融事業が営業利益の3割を超えることなどを勘案し、各事業で異なるバリュエーション(株価算定の指標)を採用した。結局、目標株価は30円の引き上げにとどまり、投資判断のアンダーパフォームを据え置いた。それでも、楽天は納得せず、絶交のリリースが出された。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券のエクイティリサーチ部長の塩原邦彦氏は「コストはそもそも会社が事業部門別に実績を開示していないため、正確に振り分けて予想することが難しい。法人税率についても、会社側が業績予想を出していないため、当初は前年度実績を採用した。株価の算出方法はさまざまであり、正しいかどうかはマーケットが判断することになる」と本誌の取材に対し述べている。

楽天幹部は今回の経緯について「勉強不足なので当然のこと」と一蹴する。楽天は過去にもアナリストと対立したことがあるが、このようなリリースを出すのは初めて。はたして投資家は異例の対応をどのように評価するのだろうか。

(撮影:尾形文繁)

週刊東洋経済2013年7月13日号

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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