入来祐作、プロ野球「戦力外」後の挫折と転身

あぐらをかいていた男は裏方に回り悟った

本人は「たまたま」だと話すが、人として成熟した入来に、コーチ就任の話が舞い込んだのは決して偶然ではないはずだ。入来を見ていてくれたのは福岡ソフトバンクホークスの監督になることが決まっていた工藤公康だった。

「工藤監督から携帯にお電話をいただいたのは、2014年11月、ベイスターズの秋季キャンプの準備で行っていた奄美大島にいるときでした。工藤監督の電話番号を知らないので仕事関係の連絡かと思って電話に出ると工藤監督で、『今の仕事はそろそろいいんじゃないか。ユニフォームを着て一緒にやろう』と誘っていただきました。

本当に驚きましたね。工藤監督とはプライベートのつきあいもないですし、解説者時代にキャンプに来たときに挨拶をする程度。『今まで生きてきたことを、そのまま伝えてほしい』と言っていただたいので、裏方をやっているときの私を知ってくださっていたんですかね」

裏方時代に培った習慣が生きている

コーチ1年目は3軍で、2年目の2016年は2軍で投手コーチを務めた。裏方時代に自分自身が変化し、培った視野を広げる習慣が生きている。

「常に各選手の一挙手一投足を見逃さず、コミュニケーションを図って今、何を考えているのかを理解してアプローチを変えるようにしています。人を育てる難しさはすごく感じます。特にソフトバンクは選手層が厚いので1軍に上がるチャンスは多くないので、選手のモチベーションをどう上げてあげるか。

みんなアマチュア時代は、その地域で目立つ存在だったわけで、中には王様気分で入ってくる子もいますから。中心選手じゃなくなっても、プロで生き抜くために自分が機能できる場所を見つける。スタイルであったり、自分がいかに変われるかだったりも大事になってくる。プロ野球に限らず自分を変えるということはチャレンジですから難しいところではありますが手助けしていきたい」

選手時代には経験することのなかった苦労や挫折を味わい、みずからが生まれ変わったことでコーチになるチャンスを得た入来の声は終始、穏やかだった。

2017年は再び3軍投手コーチとして若い投手たちと向き合う。

「若い子たちを見ると気持ちが盛り上がるんです。この子たちが活躍してほしい、どうやったら活躍できるのか。いつもそんなことを考えています。それと自分の経験も踏まえて、人としても認めてもらえるような選手になってもらいたい。そういう話をすることもありますし、そこも常に頭に入れて選手たちと接しています」

その言葉は一層の丸みを帯びていた。

(敬称略、文:鷲崎 文彦/スポーツライター)

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