入来祐作、プロ野球「戦力外」後の挫折と転身 あぐらをかいていた男は裏方に回り悟った

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「いろいろな形でいくつかの球団の方にお願いもしたんですが、話すら聞いてもらえないような状態でした。そのとき、現役のときの自分の生き様が良くなかったんだなと、悔いました。自分勝手で、やめたときに誰かに助けてもらえるような姿ではなかったんだなと反省しました」

真っ直ぐな性格ゆえに入来は現役時代、自分が正しいと思ったことには正直に行動してきた。それによって周囲や球団と衝突したこともあった。結果的に迷惑をかけてしまったときもあった。だが、個人事業主であるプロ野球選手は、まわりに迎合していてはなかなか成功を掴めないのも事実だ。

「そういう気持ちでないと戦えない部分はありますが、しっかりと対応している選手もいますから。個々の人間力ということだと思います」

困っている入来に手を差し伸べてくれたのは、横浜入団時の編成担当者の浅利光博氏だった。打撃投手の話を打診され、引き受けた。スター選手から裏方への転身。巨人の「ドラ1」のプライドは邪魔にならなかったのだろうか。

「球界に残るにはその選択しかなかった」

「それまでの野球人生のプライドを保ったまま次の仕事があれば、そんなありがたいことはないんでしょうけど、球界に残るには、その選択しかなかったですからね。ただ、当然ですけど打撃投手は選手のときのように脚光を浴びるわけではない。それどころか目に留めてもらうこともない状況になる。こういうと生意気ですけど、ずっと注目してもらえる立場だったので戸惑うところもありました。頭ではわかっているんです。その状況を受け入れようともしている。でも、精神的なバランスを崩してしまった」

頭ではわかっていても精神的なバランスを崩してしまった。TBSテレビ『プロ野球戦力外通告~クビを宣告された男たち』は12月30日(金)夜10時から放送です

春季キャンプが始まり、なにごともなく新しい仕事をスタートしていた。しかし、開幕前あたりからストライクが入らなくなり出す。

きっかけはわからないという。「おかしいな」「これはマズいな」そう思い始めたときには、もう収拾がつかなくなっていた。ときには自分の足元にボールを叩きつけてしまうことさえあった。

「それまではボールを投げて自分を表現していたのに、今度はバッターに気持ち良く打ってもらわないといけない。そう思えば思うほどおかしくなるんです。うまくできないから焦りも感じる。『なんでこんなこともできないんだろう。俺はチームの中でなにも役に立っていない』と自己嫌悪にも陥りました。自信もなくなるから、またうまくいかなくて焦る。

悪循環でした。腕が縮こまってしまい、イップスになりました。全然、ストライクが入らなくなって、自分の存在価値が見い出せず、『俺、いてもいなくても変わらないやん』って。一般の会社でも窓際族というのがありますけど、それをテレビとか雑誌で見たりすると、俺と同じような感じなのかなと思ったり。自分がいなくなったらどうなるかなと考えたこともありました。鬱のような状態でした。やめたいなと思ったときもありましたけど、ほかに仕事もないですから」

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