入来祐作、プロ野球「戦力外」後の挫折と転身

あぐらをかいていた男は裏方に回り悟った

球界に残り続けたいとの一心で2年間、耐えた。しかし、2年目のオフに球団から呼ばれたときにはクビを覚悟していた。

「イップスで迷惑ばかりかけていたので『せっかくお仕事をいただいたのに申し訳ありません』と頭を下げてやめるつもりで行ったのですが、『来年から用具係な』と。本当にありがたかったです」

その理由を自分ではどう考えているのか。「なんでですかね」と謙遜する入来に繰り返して問うて聞き出したのは「真面目にやっていたからなのかなと思います」という答えだった。

誰かのために必死になって頭と体を動かした

打撃投手としてチーム、選手の力になれていないと痛感していた入来は、とにかく役に立てることを探した。打撃練習後のネットの片づけを誰よりも率先して行い、球拾いもほかの打撃投手の倍以上、拾い集めた。チーム全体をつぶさに観察して、この選手はいつもここで素振りをするからバットを置いておこう。自分ではなく、誰かのために必死になって頭と体を動かした。

とにかく役に立てることを探した

選手時代とは対照的に、今度はその姿で次の道を切り開いたのだ。

「用具係はマネジャーと連携しながらやらないといけない現場では重要な役割なんです。用具の準備や管理だけでなく、チームの予算を考えながら必要な野球道具などを購入したりもします。非常に責任のある仕事です。そのポジションを任せてもらえたというのも嬉しかったです」

裏方に回ってからの入来は「感謝の気持ちがいかに大切か」という思いが強く育っていった。

「自分が置かれた環境や、関わった人たちに感謝する。人を大事にする。現役のときに1番欠けていたのはそういうところでした。プロ野球選手でいることにあぐらをかいていた。振り返ると本当に恥ずかしいです。でも打撃投手、用具係になってからは、与えてもらった場所で、誰にも迷惑を掛けず、誰かの役に立てるように一生懸命やって、無事に1日を終える。それで十分なんじゃないかなって思えるようになりました。

現役をやめてすぐはコーチになりたいと思っていましたが、それも年々、薄れていきました。夢や目標を持つことは大切ですけど、そればかり思い描いていると、そこに近づけていないときにモチベーションを上げられない。かえって辛くなってしまうこともある。世間でも子供に限らず、大人でもそれが見つかっていない人だっている。『目の前の1日を無事、過ごせた。ありがとう』それでいいと思うんです」

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