あの三菱地所が「ワンルーム」に参入したワケ 都心の25平方メートルで2700万円台から

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「販売すれば飛ぶように売れた2~3年前と比べ、物件によって売れ行きに大きなばらつきが出ている」(大手デベロッパー幹部)。今2016年度の大手不動産の中間決算では、分譲マンションの売れ行きが鈍化している状況がくっきりと表れた。三菱地所や野村不動産ホールディングスなどのデベロッパー各社は、期初に予定していた分譲マンションの販売戸数見通しを下方修正。特に苦戦しているのが、郊外に立地し、駅前や商業施設併設などといった特徴もないマンションだ。

一方で都心の物件は好調を持続する。単身者やDINKS(共働きで子どもがいない夫婦)の増加もあり、駅近のワンルームや1LDKのマンション需要は特に堅調だ。最近では三井不動産が白金高輪で、住友不動産も東麻布や中目黒で分譲を開始。東京カンテイの調査では、首都圏のワンルームマンション(専有面積30平方メートル未満)は年々値上がりを続けているにも関わらず、今年も8000戸レベルの供給が維持される見込みだ。

今後も都心部では単身者やDINKS世帯が増える見通し。マンション市場の頭打ちも予想される中、地所の参入はこれから拡大が見込まれる市場への種まきという要素もある。

投資目的や節税対策で市場拡大

さらに低金利の環境が追い風となり、投資目的や節税対策でワンルームマンションを購入する人が増えている背景も大きい。

もともと新築の投資用マンションは、「中古と比べて値段が高く利回りは低いので、昔は今ほどの人気はなかった」(ファイナンシャルアカデミー「不動産投資の学校」講師の束田光陽氏)。それが現在は都心の中古マンションも価格が高騰。以前と比べると、投資目線では都内の新築と中古の物件の人気の差が埋まりつつあるという。

こうした消費者ニーズや投資環境の変化に加え、デベロッパー側の苦しい事情もある。この数年、都心はまとまった土地の確保が厳しい上に地価が値上がりし、ファミリーマンション向けの大規模用地の仕込み自体が困難になっている。狭い土地で事業展開できるワンルームマンションはデベロッパーにとっても都合が良いというわけだ。

マンション市場全体の先行きを不透明感が覆う中、三菱地所は住宅事業に新たな収益柱を作ることができるのか。ブランド力以外で、どこまで他社物件と差別化できる戦略を打ち出せるかにかかっている。
 

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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