出世の法則!ホンダ創業者は愛嬌の塊だった

宗一郎を取材した最後の記者が感じたこと

自動車界のもう一人の名物経営者、スズキの鈴木修会長にまつわるエピソードにも、思わずにやっとしてしまったことがあります。

鈴木といえば80歳を過ぎた今もお元気で、自社の決算発表や業界の代表としてよく記者会見に出てきます。「燃費不正測定」問題で自ら謝罪したのも、記憶に新しいところです。

筆者も新聞社にいた頃に、何度かインタビューしたことがあります。真っ白な眉毛の表情も豊かに、味のある答えを返してもらったのを懐かしく思い出します。

今から25年ほど前のこと。鈴木社長は次のように語って苦笑いしていました。

「私の家は55坪で、鉄筋コンクリートではあるけど、中は薄いベニヤ板で仕切っているんだ。だから、お客さんには『気を付けて歩いてください』ってお願いしてる。社長を15年やっても、1億円の豪邸なんて、なかなか建てられないもんだねえ」

「今の時代、月々のローンが6万円くらいで、駐車場代も入れると、1世帯で月10万円くらい車にかかるでしょう。明らかにバブルの後遺症だね。車庫のことはあんまり大っぴらに言えないんだけどさ、このままじゃ誰も車に乗らなくなるんじゃないかって、経営者はみんな、内心ビクビクしてるんですよ」

後のセリフは、国内のユーザーが激減することを見通していたかのようで、改めて驚かされますが、こんな本音をてらいなく漏らす人柄が印象的でした。

“中小企業のおやじ”の真骨頂

スズキの関係者から、次のようなエピソードを聞いたことがあります。

ある日、鈴木のところに飲料メーカー大手の社長が訪ねて来ました。普段は黒塗りの高級車で移動している社長ですが、その日は乗用車でやってきたそうです。

お互いにあいさつを交わし、面談に入ろうとする直前、社長はこう切り出しました。

「今日は鈴木会長にお会いできるというので、御社の車でここまで来ました。乗り心地のすばらしさに、改めてスズキの技術力を実感した次第です」

半分はお世辞とはいえ、自社の車を褒めてもらったことにまんざらでもない表情を浮かべた鈴木と、社長との間でスムーズに話が始まります。社長の気配りもその場の潤滑油になって、さぞかし会話がはずんだことと思います。

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