3Dプリンタ市場が勃興、日本勢の動向は? GEが欧州メーカーを買収、業界に再編の波も

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だが現時点では、製作スピードや精度に関して課題があるのも事実だ。ストラタシスの第3四半期(2016年1〜9月)決算は、約66億円の営業赤字に沈んだ。2強のもう一方・米3Dシステムズも同49億円の赤字と、大手でさえまだ研究開発が先行し、利益が出る体制になっていない。

さらに3Dプリンタを扱う側の人のスキル不足も、ボトルネックになっている。今年11月に東証マザーズに上場した、3Dプリンタによる模型や商品の製造・販売を手掛けるJMCの渡邊大知社長は「3Dプリンタは“腕”が物をいう」と話す。

扱える人材が国内で不足

3Dプリンタを動かすには、製図のための3次元CADなどのソフトを使いこなす必要がある。その巧拙によって、製品の出来上がりに違いが生まれる。さらに国内においては、そもそも3次元のCADを使える人材が少ない。

こうした事情もあってか、国内の市場規模は2016年時点で400億円程度と、2兆円近い世界に比べてまだ小さい。

ただ、伸びが見込まれていることもあり、国内大手メーカーも動き始めている。リコーは2014年に3Dプリンタの仕入れ販売やコンサルティング事業を始め、2015年には自社製品を発売した。

キヤノンは、造形材料に現在主流の樹脂ではなく金属を使う3Dプリンタを開発中。樹脂タイプに比べて技術的なハードルは高いが、金属の部品や製品を直接作れることになり、ニーズは強い。

本格離陸前の市場で、後発組の日本勢が存在感を示せるか。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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