原発処理21.5兆円、東電支援策は不安だらけ 前回支援策と同様、再破綻の可能性がある

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消費者団体の代表として参加した大石美奈子委員は、託送料金に上乗せして負担を求めることに強い反対意見を表明。「費用総額がはっきり示されないまま、託送原価への転嫁ありきで議論を進めるべきではない」と主張した。

東京大学大学院教授の松村敏弘委員は、「今回が前例となって次から次へと費用が託送料金に上乗せされることになるようだと罪深い」との懸念を示した。ほかの委員からも「普通のビジネスではありえない」といった指摘があった。

前回の支援策が事実上破綻したことから、経産省が今回示したスキームも再破綻の可能性をはらんでいる。その象徴が除染費用の捻出方法だ。

他社も事業統合に及び腰

従来の再建計画では、東電の筆頭株主である原子力損害賠償・廃炉等支援機構が保有する東電株式の売却益を2兆5000億円と想定したうえで、それを除染費用に充てるとしている。しかし、東電の株価は低迷を続け、12月9日現在、時価総額は8300億円程度にとどまる。今のままでは売却益どころか売却損が発生する。にもかかわらず今回の支援策では、企業価値向上の具体的な裏付けがないまま、売却益を4兆円に増額している。

東京電力ホールディングスの廣瀬直己社長(記者撮影)

東電は今回、送配電や原子力分野でも他社との事業統合や海外展開にも踏み込むとしているが、難航する可能性が高い。東電が保有する柏崎刈羽原発の分社化に際して、最有力の提携候補と見られていた東北電力の原田宏哉社長は10月27日の記者会見で、東電との原発事業の統合の可能性についてきっぱりと否定している。

福島事故の後始末に引きずりこまれる恐れがあるうえ、万が一、東電との事業統合後に原発事故が起きた場合、共同責任を問われかねない。

経産省は東電への支援強化をテコに業界再編を加速させたい考えだが、狙い通りに事が運ぶ保証もない。数年後に再び再建計画の作り直しに追い込まれる懸念は、払拭されていない。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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