原発処理21.5兆円、東電支援策は不安だらけ 前回支援策と同様、再破綻の可能性がある
一方、廃炉にかかる費用は厳密なものではなく、債務として認識する必要はないとされる。東電の連結純資産(2016年9月末時点で2兆2686兆円)を大幅に上回るにもかかわらず、経産省幹部は東電自体が債務超過に陥ることはないとの見通しを示している。東電は、送配電事業子会社が合理化努力によって捻出した利益を廃炉事業に回すことで、30~40年もの超長期にわたって廃炉費用を賄う。しかしながら、費用が合理化努力分を大きく上回ることになれば、今回のシナリオは根底から崩れる。
廃炉・汚染水対策の費用捻出に際して、電気料金の値上げを求めないことから、経産省では国民負担は生じないとの見方を示している。しかし、この見方には問題がある。
送配電子会社の合理化努力分は、現在のルールでは送配電線の利用料(託送料金)の引き下げに充てることが義務づけられている。だが今回、東電に限って特別扱いで引き下げを求めない。つまり、本来下がるはずの託送料金が高止まりするという点で、利用者に負担が転嫁されることを意味している。
賠償費用のつけ回しに反対意見
さまざまな費用の中でも、賠償費用の負担のさせ方は異例中の異例だ。賠償費用の負担方法については、経産省が設置した「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」(以下、貫徹小委)の財務会計ワーキンググループで主に審議された。
ここでは原発事故後の2011年7月に新しい法律が施行されて現在の賠償スキームができるまでに「本来、確保されておくべきだったとする金額が約3兆8000億円あった」と推定したうえで、経産省はそのうち2兆4000億円を託送料金に上乗せする形で、原発の電気を用いていない新電力の利用者を含めた全国民(沖縄県民を除く)に負担させる案を示した。
経産省の説明では、原発による発電が始まった約45年前にさかのぼって用意しておくべきだった事故に備えた費用を「過去分」と呼び、これについては原発を持たない新電力も含めて幅広く全国のユーザーに支払わせる。かつて電力自由化前に、従来の電力会社のユーザーとして、原発による“安い電気”の恩恵を受けていたことが理由だと経産省は説明している。
しかし、こうしたやり方についてはワーキンググループに参加した委員からも批判や疑問の声が数多く上がった。
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