【産業天気図・化学】ナフサ高と半導体材料の価格軟化が負担で08年度も「曇り」に
08年4~9月 | 08年10月~09年3月 |
化学産業は石油化学の最上流品種であるナフサ(粗製ガソリン)価格の高騰を受けて、2008年度は昨年に続き前半・後半ともに「曇り」となる。各社とも製品価格と実際に使用するナフサ価格との乖離をなくすためのナフサ価格連動方式(ナフサ・リンク・フォーミュラ)を導入しているが、それでも急激な上昇に追いつくのが難しい。また、半導体市場の需給が軟化しており、半導体材料を手掛ける会社にとっても懸念材料になりうる。石化のような汎用品から高スペックの特殊品に傾注することで08年度の営業利益の明暗は分かれそうだ。
08年度の各社想定ナフサ価格は1キロリットルあたり6万7000円から7万2000円と幅広い。ただ足下ではすでに7万円を超えており、前期比で7割の増加。04年度からは円安とともに価格上昇を続けているが、今09年3月期は円高でも上昇を相殺できない。主要6社を見ていくと、石化専業色の強い三井化学<4183>は前期比14.5%の営業減益で、光学フィルターからの撤退も響く。オレフィン等が主力の東ソー<4042>も同18.8%の減益となる。住友化学<4005>は同7.2%の減益、唯一12月決算の昭和電工<4004>は第1四半期(08年1月~3月期)を終了した時点でメタノール価格高騰等が痛手で前期比3%増益の予想から一転、同15%の減益となると四季報では予想している。
一方で、石化以外の事業が業績を下支えする企業もある。旭化成<3407>は住宅の引き渡し戸数増で前期比横ばいを維持、三菱ケミカルHD<4188>は旧田辺製薬が通期で寄与し営業益は前期から反発する見通しだ。
半導体の需給は昨年後半から緩和基調。封止剤の住友ベークライト<4203>は横ばいだが、今期下げ止まるものの200ミリメートル品の価格低下がきついSUMCO<3436>は21.6%の減益だ。が、ウエハ研磨加工を手がける三益半導体工業<8155>と塩ビと電子材料が主力の信越化学<4063>は例外で、300ミリメートル品の好調が価格軟化を吸収して、ともに5%以上の営業増益を確保する。
そのほか注目されるのは、高齢者向けに慢性腎不全用薬が伸びるクレハ<4023>、エアバッグ用ガス発生装置が続伸するダイセル化学<4202>だ。また、合成ゴムの価格浸透が遅れるが、半導体の微細な回路配線を可能にする感光性樹脂フォトレジストが高水準のJSR<4185>が七年連続増益維持の見通し。未曾有の原燃料価格高騰の中で、自らの得意分野で高付加価値を持つ製品のシェアを高めている会社に今後も期待が集まる。
【二階堂 遼馬記者】
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