AirbnbツアーサービスをLAで体験してみた 「民泊+ユニーク」が映した風景
アルヴィンの両親は1980年代にフィリピンから米国に移住したきた。忙しく働く両親に代わって、小さい頃から家族のためにご飯を炊き、卵料理を作っていたという。そのせいか料理に並々ならぬ情熱を持つようになり、大学を卒業してからシェフの道に進んだ。いまではフィリピン料理にアメリカの味を取り入れたモダンフィリピン料理を創り出すシェフとして活躍中。日本でも話題となった卵料理「エッグスロット」を名物にしたレストランをロサンゼルスに構え、これがヒット。11月にはラスベガスに2号店も出店した──。こうやって、調理のポイントだけでなく、シェフの思い出を通じて料理の来歴も知れるのが楽しい。
魚が焼けてきたようだ。アルヴィンは鉄板の上の魚を裏返してトレイに載せ、「……7分かな」とつぶやきつつ、表面が黒く焼けた魚をオーブンに入れた。
ともにトリップに参加している面々と料理の説明を聞いたのち、ホールのテーブルに案内された。料理が出てくるまでの間、隣のポルトガル人、向かいのスペイン人、その横のブラジル人とフットボール(サッカー)の話で盛り上がる。2時間前まではまったくの他人だったのが、ほどよく打ち解けてきたころに、料理が運ばれてくる。兄弟のアンソニーが、料理に合うワインも持ってきてくれた。お酒が入り、同じものを食べることで、場は和み、話はさらに弾む。
ヒラリーは言う。「ロサンゼルスのフードシーンの震源地はここ、チャイナタウンにあります。大きな資本を持たない若いシェフがいろんなことを試しているんです」
フード・インキュベーション
ここロサンゼルスでは、フードトラックからキャリアをスタートさせるシェフも多い。「自分もゼロからスタートしたんだ」と言うアルヴィンは、「フード・インキュベーション」という構想を温めてきた。
ファー・イースト・プラザにはフードトラック出身のハウリン・レイズなど、新しい味を提供するレストランが多数入居している。アルヴィンもここでラーメン屋「ラーメン・チャンプ」を経営していたことがある(その後、売却)。ここの活気を知っていたから、空いた店舗を利用してユニット120を開設するのは自然な流れだった。
1月にオープンしたユニット120は、フード・インキュベーション構想の実験場だ。新しい味に挑戦するためには、ときに何千ドルもの資金が必要となる。
ユニット120は、新しいメニュー、新しいコンセプト、新しい提供形態など、料理にかかわるあらゆるアイディアの具現化を望むシェフを支援する場として活用されている。