トランプが米国映画の「ネタ」にされるワケ TVやプロレス「WWE」に、どう関わったか

✎ 1〜 ✎ 46 ✎ 47 ✎ 48 ✎ 最新
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

彼らが指す〈エリート〉とは、本来の意味のエリートではない。もしそうならば3代目経営者のトランプが支持されるわけがない。彼らにとってのエリートとは、彼らが生理的に許しがたい今のアメリカ社会(同性婚は当然の権利であり、メキシコからの移民は必要とされる)を受け入れる、(彼らから見たら)格好つけた人々のことである。

2050年代、アメリカに訪れる現実

でも格好つけるも何もこの現実は受け入れるしかない。このままいけば2050年代にはヒスパニックが最大勢力の人種になるのだ。保守的な共和党すらそれを見越してともにキューバ系のテッド・クルーズとマルコ・ルビオを大統領候補にする時代である。トランプが大統領になったところで、時間の流れを一時的に押し戻すに過ぎない。

アメリカの大統領選においては、ロック音楽界が民主党候補を、カントリー音楽界が共和党候補を支援する傾向が強い。今回もその傾向は崩れなかったが、前者はファン層の中核を占める高齢の白人男性に配慮して、後者はトランプの不道徳的な言動に眉を潜めて、いつもほどは行動が熱心ではなかった気がする。

むしろ今回、目を惹いたのは、ケイティ・ペリーやマイリー・サイラスといったアイドル・シンガーがヒラリーを熱心にサポートしていたことだった。彼女たちは上から目線の啓蒙活動をしていたわけでなく、ファンである若者たちの政治志向を反映した行動を取ったに過ぎない。出口調査によると今回の大統領選で18歳から29歳の有権者のうち、55%がクリントンに投票したとされている(トランプは37%)。しかもアメリカの出生率は1.88と、1.41の日本よりもかなり高い。若者の連帯は将来、確実に力になりえるのだ。

4年後なのか8年後なのかは分からない。でもアメリカが本当の意味で変化する時代がいずれやってくることは間違いない。だから個人的には、トランプがこれから日本に及ぼす影響以上に、トランプが去った後のアメリカの根本的な変化に日本人が対応できるかどうかの方が心配なのである。 

(敬称略)

長谷川 町蔵
はせがわ まちぞう / Machizo Hasegawa

1968年東京都町田市生まれ。90年代末からライターとして活動。映画、音楽、文学などに関して幅広く執筆し、中でもアメリカのポップ・カルチャーを得意分野とする。著書に『ヤング・アダルトU.S.A. (ポップカルチャーが描く「アメリカの思春期」)』(共著、DU BOOKS)、『21世紀アメリカの喜劇人』(スペースシャワーネットワーク)、『文化系のためのヒップホップ入門』(共著、アルテスパブリッシング)、『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、『ハイスクールU.S.A.―アメリカ学園映画のすべて』(共著、国書刊行会)、『あたしたちの未来はきっと』(タバブックス)。監修に『プリンス 1958-2016』(スペースシャワーネットワーク)。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事