【遠藤功講演】遠藤功のプレミアム戦略(その1)

キャッチ・コピーではなく戦略としてのプレミアム

●キャッチ・コピーではなく、あくまでも戦略としてのプレミアム

 これだけ価格の高い商品を、日本以外の会社がこういう値付けをして消費者に受け入れられて、消費者は喜んで払っていると。日本の会社合理性を追求して徹底的に効率化して、いい商品を提供しています。でも、これで本当にこれからもやっていけるのでしょうか。
 商品には「格」があると思うんですね。単純に「上・中・下」と表すと、「下」というのはとりあえず最低限の機能を果たすということ。「中」はそれなりの品質を備え、機能的な価値は十分というもの。「上」はそれに何かプラス・アルファがあるわけです。それを持っていることによる高揚感、そういうものがなければいけない。

 日本の会社は、これまで「中」の部分に圧倒的な強さを持っていたわけです。クオリティの高いものをリーズナブルな価格で作り、提供していくということが得意だった。これは今後とも日本の会社は維持しなければいけないと思います。
 ただ、残念ながら、この分野には新たなコンペティターが来ます。中国にしてもインドにしてもブラジルにしても、近い将来どんどん侵食してきます。今は日本の会社の商品に比べたら大したことないと思っているかもしれませんが、そんなことはない。彼らのクオリティはどんどん上がり、しかもコストでは絶対かなわないわけです。

 日本の会社というのは、製造業もサービス業もそうですが、「バリュー・フォー・マネー」という考え方です。日本語にすると値ごろ感とかお値打ちということ。お金に合った価値があることを日本人の得意としていたわけです。そのために、改善や合理化を行って徹底的に無駄を省き、品質の高い商品やサービスを提供していく。これが今までの日本の会社の得意分野だったわけです。
 前述した海外ブランドの会社は逆で、「マネー・フォー・バリュー」。価値に合った価格をとにかく付けてしまうわけです。この発想の違いがそもそもの違い。モノが作れるか作れないか、それだけの話ではなくて、そもそもビジネスとしての発想が全然違う。残念ながら日本の会社には、こういう値付けをできる会社はまだまだ少ない。

 日本企業は力があるから、商品とかサービスではそん色のない価値を作れると思います。日本のバッグ屋さんがケリーバッグと同じものを作れないか。作れますよ。ポルシェと同じもの作れないか。作れます。では、それをビジネスとしてどう展開していくのか、それを日本の会社はこれから真剣に考えていかないといけないと思っています。もう、ブランドの時代は終わったんだと。あくまでキャッチ・コピーではなく、「戦略としてのプレミアム」を考えていくことに主眼があるのです。
その2に続く、全5回)

遠藤功(えんどう・いさお)
早稲田大学大学院商学研究科教授、株式会社ローランド・ベルガー会長
早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機株式会社、米系戦略コンサルティング会社を経て、現在に至る。
著書に『現場力を鍛える』『見える化』『ねばちっこい経営』(東洋経済新報社)などがある。
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