【遠藤功講演】遠藤功のプレミアム戦略(その1)

キャッチ・コピーではなく戦略としてのプレミアム

『ToyokeizaiLIVE』シリーズ RoppongiBIZ*東洋経済提携セミナー
講師:遠藤功(早稲田大学大学院商学研究科教授、(株)ローランド・ベルガー会長)
2008年1月29日 六本木アカデミーヒルズ

 私は去年の12月に『プレミアム戦略』という本を出したのですが、なぜそんな本を出したかというところからお話をさせていただきましょう。たぶん、ここ3年ぐらいの間にいろいろなメディアで「プレミアム」という言葉をよく耳にするようになったと思うのです。私はコンサルティングをもう20年やっていますが、いろいろなプロジェクトにおいて「高付加価値戦略」「プレミアム」などというアプローチを展開してきました。
 日本の企業が成長していく中で、どうやって高付加価値の方へシフトしていくのか。しかも、ただ単にシフトするだけではなくて、プレミアムの価格を取れなくてはいけないわけですね。これは結構大変な作業で、たくさんのプロジェクトをやってはきましたが、なかなかうまくいかないものでした。
 「プレミアム」という言葉がどんどん独り歩きしている中では、「キャッチ・コピーとしてのプレミアム」ではなく、「戦略としてプレミアム」を考えていかなければいけない。広告宣伝の中で「プレミアム」という言葉を使えば、それでお客さんがうれしそうに買うんじゃないか、という安易な考えに流されがちですが、そうではなくて企業の戦略としてプレミアムを打ち出していく必要があります。今まで日本の企業がやってきたビジネス・モデルから、とにかく発想を変えなければいけない。では、そこで打ち出す戦略というのは、今までの戦略と何が違うのかということをきちんと整理したいということで、この本を出したわけです。

●商品の「格」

 昨日、日経新聞を見ていたら、マクドナルドの「プレミアム」が出ていました。「プレミアム・ロースト・コーヒー」は、「シャカシャカチキン」と一緒に買うと150円と。これもプレミアムなんですね。何でもプレミアムって付ければ買ってくれるんじゃないかという発想で、本当のプレミアムを生み出せる会社が日本から生まれてくるのだろうかというと、私は決してそう思わないわけです。発想をどういう風に変えていかなければいけないのか。レクサスがBMWとかアウディのような存在に、セイコーがロレックスに替わるようなブランドにならなきゃいけない。そうならなければ、日本企業は世界では生きのびていけない。

 まず、商品の「格」について触れていきたいのですが、商品には、「格」の違いというものがあります。自動車の例で言うなら、スズキのアルトとポルシェの911カレラ。もう全然違いますよね。皆さんどっちを買いたいですか? それは言うまでもなく……いや、「おれはアルトがいい」という人もいるかもしれないけれど、車好きならやっぱり911カレラを持ちたいですよね。アルトは、一番安いモデルだったら70万円台で手に入ります。値頃感のあるいい車です。では、ポルシェの911カレラは幾らでしょう。1178万円です。別に911カレラは空を飛ぶわけでもないですよ。でも、この価格差って何なのだろうと。実に16・7倍です。
 では、女性の好きなバッグ、サマンサタバサとエルメスのケリーバッグ。サマンサタバサは、若い女性に人気がありますよね。サマンサタバサのあるモデルは、1万5225円です。一方ケリーバッグは91万3500円。実にその差、60倍です。この価格差はどこから来るんだろうということを真剣に考えなければいけない。今、事例を挙げましたが、高い方の商品はいずれも日本の会社のものではありません。これでいいのでしょうか。

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