ベルギーが「過激派の巣窟」になった根本原因 首都郊外のモレンベークで起きていること

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続いて、国内で最大の発行部数(約27万部)を誇るフラマン語新聞ヘット・ラーステ・ニュースの記者でジハード戦士問題の専門家であるギー・ファン=フラ―デン氏に話を聞いた。同氏も、テロ発生に「特に驚きはなかった」という。

 

ヘット・ラーステ・ニュース紙のギー・ファン=フラーデン氏

――2つのテロについてどう思っていたか。

それぞれの日に起きると予測していたわけではないが、大規模なイスラム・テロが発生するだろうとは思っていた。ただ、ベルギーがこれほど関与しているとは思わなかった。

ベルギーはジハード戦士の割合が多い。今年4月時点の推計で、ISが勢力を拡大するシリアやイラクで戦うためにベルギーを離れた若者は589人。人口100万当たりで50.02人に相当し、欧州連合の中では最多だ。

――ベルギーのジハード戦士の特徴は何か。

ベルギーということで特別の要素があったかというと、特定は難しい。なぜジハード戦士になったかを考えると、例えば社会の下層にいる、貧困で教育程度が低いといった要素が指摘される。しかしその一方で、両親が移民としてベルギーにやってきてビジネスが成功し、裕福な中流家庭で育った若者たちもジハード戦士になっている。

強力なリクルートメントのネットワーク

その理由は、ベルギーに強力なリクルートメントのネットワークが存在していたことだ。ベルギー第2の都市であるアントワープには、イスラム組織の「Sharia4Belgium」(2015年、テロ組織として分類)があったし、ブリュッセルには元アルカイダの訓練キャンプに参加したことがあるモロッコ出身のカリド・ザルカニがフォロワーを増やしていた。

両グループともに当初はムスリムの権利を高める運動を主導し、スポーツ活動を通じて参加者を増やし、最終的にはシリアやイラクにジハード戦士を送るようになっていった。

――なぜ移民家庭出身の、イスラム教徒の若者たちがこうしたグループのメンバーとなり、武力を使って相手を倒そうと思うようになるのか。

それは「社会からの拒絶」という要素があるからだと思う。1つ目の要因がリクルートメントネットワークの存在だとすれば、2つ目の要因がこれだ。教育程度が高いか低いか、家庭が裕福か貧困かにかかわらず、「拒絶された」と感じ、こうしたグループに参加する。

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