日本の美術品、ただ今、中国へ流出中 活況呈す中国のオークション

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オークション産業を生んだ伝説の男

中国では1990年代以降に改革開放政策によって、製造業にせよ、飲食業にせよ、不動産業にせよ、もともとあった業界が大きく成長し、今日の姿になったものが多い。しかし、オークションは完全にゼロから誕生した。その意味で、改革開放政策の象徴のような業界である。

中国で初めてオークションが行われたのは1992年のことだ。中国嘉徳国際拍売公司という会社が、北京長城飯店で中国初の美術品オークションを開いた。

中国嘉徳国際は、2人の伝説的な人物によって立ち上げられた。

ひとりは陳東昇。湖北省出身で、武漢大学の経済学部を卒業後、出版社で働いていたが、新聞記事で中国にはオークション会社がひとつもないと知って起業することを決意した。後に陳東昇は、嘉徳での成功を足掛かりに1996年には大手保険会社「泰康人寿」を立ち上げ、宅急便事業にも参入し、今や中国を代表する企業家となった。2012年に中国の雑誌「新財富」が発表した富豪トップ500人のランキングにも入っている。

陳東昇が嘉徳立ち上げでパートナーに誘ったのが、天安門事件で失脚した趙紫陽元共産党総書記の娘、王雁南だった。中国共産党幹部の子弟の間では「亮亮」と呼ばれる女性で、長身の美女。米国の大学を卒業後、北京でホテルのマネジャーをしていた。

市場規模は、なんと553億元

この2人が育てた嘉徳は、後に多くの企業が後を追って参入してきた中国のオークション業界でも、一貫してトップ企業の座を守り続けている。

嘉徳が成立して以来、中国のオークション市場は驚異的なスピードで成長を遂げた。私の手元には2000年以降のデータしかないが、2000年時点で、中国の美術品オークションの総落札額は12.5億元(1元=16円)しかなかったが、2005年には100億元を突破し156億元を記録している。2008年はリーマンショックで191億元と初めて減少に転じたが、2009年からすぐに復調し、2010年は369億元、2011年はなんと553億元を稼ぎ出している。2012年はいったん300億元を切るまで落ち込んだが、今年は再び増加に転じると見られている。

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