元商社マンが挑む「湘南モノレール」活性化 社長募集に応募し転職、乗客増に手応え

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観光客を獲得するためには、「知名度が低い」という「弱み」を克服することはもちろん、さらに選択・支持される施策を立案し、実行に移す必要がある。FBなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)活用は知名度向上に一定の効果を発揮することは間違いないが、観光客に選択・支持してもらうためにもう一歩踏み込んだ施策があってもよい。

ここでは、江ノ電の人気に便乗して、湘南モノレールの知名度を高め、選択・支持につなげる方法を考えたい。先に紹介した土産物店の店員は「江ノ電は全国区。不動の人気がある」と言う。例えば、モノレールのファンを増やすための取り組みとして、「江の島エリア」に乗り入れる鉄道3社共同グッズを江の島島内の土産物店などで販売することが考えられる。また、土産物店の店頭に「湘南モノレール協力店」などの掲示をした上で、モノレール乗車券の割引券を土産物購入客に無料配布することも一案だ。そうした施策が、観光客の間での知名度向上と実際の乗車に結びつくきっかけになると筆者は考える。

バリアフリー化は観光でも地域輸送でも重要だ

また別の「弱み」である「バリアがある」状況を改善することは、観光客のみならず、日常利用する地元の人たちや通勤・通学でモノレールを利用する人たちのためにも、重要な課題である。沿線自治体は、バリアフリー化推進の地元要望を湘南モノレールに伝えるとともに、補助金交付やまちづくりプランへの記載などを通して後押しすることが重要だ。

ちなみに、現在バリアフリー化されているのは、エレベーター設置済の湘南町屋駅と西鎌倉駅、スロープ設置済の片瀬山駅の3駅で、このほかに富士見町駅で現在バリアフリー化工事が進んでいる。湘南江の島駅と目白山下駅の2駅を抱える藤沢市は「『湘南江の島魅力アップ・プラン』に基づく事業展開」の中で、湘南江の島駅へのエレベーター設置を記載している。同市計画建築部都市計画課は「利便性が向上すれば、沿線の活性化と観光客の増加が見込める」と話す。

また、市内に6駅がある鎌倉市も「湘南モノレール利用者の安全性及び利便性向上の実現のために支援したい」(同市まちづくり景観部交通計画課)という。先述した通り、尾渡氏は列車増発のためのダイヤ改正について、社内での了解を得るためにバリアフリー化の実現を引き合いに出していることから、その重要性を十分に認識しており「引き続き、駅のバリアフリー化を進める」と明言する。

このほか、交通系ICカードが使えない現状について、アンバサダーを務めた荻原さんは「(ICカードが)使えるようになれば、湘南モノレールを選ぶ観光客はさらに増えるはず」と期待を寄せる。こうした要望についても、尾渡氏は「導入を鋭意推進中」と述べ、遠くない将来への導入を示唆する。駅のバリアフリー化とICカード導入をセットで実施することで、さらなる観光誘客が期待できるだろう。

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