元商社マンが挑む「湘南モノレール」活性化 社長募集に応募し転職、乗客増に手応え

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混雑する道路上を走り抜ける湘南モノレール(撮影:尾形文繁)

最後に、アンバサダーを務めた2人とインセクト社の担当者に、観光客獲得のためのアイデアを尋ねてみた。

佐藤さんは「『ラッピングモノレール』やハート型つり革の導入など、『SNS映え』する電車を考えてほしい」と要望する。さらに、インセクト社の担当者は「SNSを用いて地元の情報を顕在化し、それを駅舎に設置したサイネージで来街者が直感的に見られるシステムを展開できれば、駅そのものが移動拠点以上の意味を持つようになり、地元の人や観光客を巻き込んだ盛り上がりにつなげられる」と付け加える。

一方、荻原さんは「1日フリー切符を500円に値下げしてはどうか。ワンコインのインパクトで販売増が期待できる」と温めてきた秘策を明かす。現状では「JRパス」との価格差はわずか100円。「1日フリー切符の価格が安くない」ことが「弱み」となってしまっている。仮に500円に値下げしてでも「1日フリー切符」を販売した方が、湘南モノレールが運賃収入を独占できるためメリットは大きい。

「懸垂式モノレール」であることを強みに

以上見てきたように、湘南モノレールが観光客を獲得するための近道は、「弱み」を克服することにあると言えそうである。さらに「外国人観光客増加」という機会を生かすことも重要だ。そのためには「江の島エリア」のメインストリートに設置された広告看板への外国語表記を追加するとよさそうである。

また「数少ない懸垂式モノレールであること」という「強み」をさらに磨き上げることも観光誘客につながる。ユニークな車両デザインの導入などといった話題作りができれば、新たなファン獲得も夢ではない。

取材を終えて江の島を散策していると、地下道入口に掲示されている鉄道3社の写真が載った案内図を見つめているカップルに遭遇した。「モノレールもいいね」と女性が話しかけると、男性は頷き、2人は地下道へと消えていった。知名度を上げて魅力的な湘南モノレールを作れば、観光客は獲得できる。そんな思いを抱いて、江の島を後にした。

大塚 良治 江戸川大学准教授

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おおつか りょうじ / Ryouji Ohtsuka

1974年生まれ。博士(経営学)。総合旅行業務取扱管理者試験、運行管理者試験(旅客)(貨物)、インバウンド実務主任者認定試験合格。広島国際大学講師等を経て現職。明治大学兼任講師、および東京成徳大学非常勤講師を兼務。特定非営利活動法人四日市の交通と街づくりを考える会創設メンバーとして、近鉄(現・四日市あすなろう鉄道)内部・ 八王子線の存続案の策定と行政への意見書提出を経験し、現在は専務理事。著書に『「通勤ライナー」 はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)。

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