元商社マンが挑む「湘南モノレール」活性化 社長募集に応募し転職、乗客増に手応え

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2015年10月に就任した湘南モノレールの尾渡英生社長(撮影:尾形文繁)

ダイヤ改正では、従来15分間隔だった平日21時~22時台および休日朝・夜に列車を増発し、運転間隔を7分半に縮めるなどの改善の結果、列車本数は53本増の549本となった。尾渡氏は「ダイヤ改正以降、定期券の発売枚数が伸びている」といい、「これは(定期券ではなく)回数券を購入して、急いでいる『行き』だけモノレールを利用していた人が、帰りもバスからモノレールへ切り替えた証拠だと考えている」と分析する。

平日の朝・夕は通勤・通学利用で混み合う同線だが、一方で日中と土日は空いていた。そこで、尾渡氏が乗車率向上に向けて取り組むことにしたのが観光客の獲得だ。神奈川県藤沢市片瀬地区(以下、「江の島エリア」)には、湘南モノレールの他に江ノ島電鉄(江ノ電)と小田急電鉄(小田急)江ノ島線が乗り入れているが、特に江の島観光における利用促進が同社にとって大きな課題であると認識されたのである。

実際、江の島島内のある土産物店で店員に話を聞いてみると、「鉄道で江の島へ来る観光客の多くが、小田急か江ノ電。モノレールで来たという人はあまり聞かない」と証言する。データも証言を裏付ける。2014年度の「江の島エリア」主要3駅の1日乗車人員(降車客含まず)は、湘南モノレール湘南江の島駅が1,887人なのに対し、江ノ電江ノ島駅は3,140人、小田急片瀬江ノ島駅は10,458人(以上、神奈川県県土整備部『神奈川県交通関係資料集』2016年2月より)。主要3駅に占める湘南モノレールのシェアは約12%に留まっている。

地域の鉄道会社連携が利用者増加のカギに

江の島エリアから横浜駅・東京駅方面へ向かうルートとして湘南モノレールをアピールする看板(筆者撮影)

湘南モノレールでは観光客獲得に向けた施策として、まずは昨年12月、江の島地下道・片瀬江ノ島駅と江ノ島駅・湘南江の島駅を結ぶメインストリートに「『速い』モノレール」と書かれた看板を設置した。江の島エリアから横浜駅・東京駅方面へ向かうルートとして、湘南モノレール利用をアピールする狙いだ。

それでも尾渡氏は「小田急やJRがあるからこそ、多くの観光客が訪れている。江の島・鎌倉エリアの鉄道会社が連携して利便性を高めることが、当社の利用促進に繋がる」と言い切る。

その意識は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の「鎌倉・江ノ島パス」(以下、「JRパス」)の積極的な販売協力につながっている。「JRパス」は700円でJR藤沢駅~鎌倉駅間、江ノ電全線、および湘南モノレール全線が1日乗り降り自由の特別企画乗車券で、運賃収入は3社で分け合う。尾渡氏は「当社の1日フリー切符(600円)を買っていただく方が運賃収入を独り占めできるのは事実だが、JRのパスは周遊性に優れておりPRに値する」という。

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