トランプ新政権は本当に財政拡張となるのか 財政政策には議会共和党の協力が必要

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トランプ氏の意向が、財政政策に色濃く出てくるのは、就任後すぐ(特に「就任後100日」)かというと、そうではない。前述のように、アメリカの会計年度は10月からである。来年9月までの2017年度は、既に予算関連法が成立している。しかも、来年10月からの2018年度の予算編成過程が、トランプ氏が大統領に来年1月に就任した直後の来年2月から始まる。

だから、トランプ氏が意向を反映させたい予算は、2018年度つまり来年10月からとなる。来年9月までの2017年度において、トランプ新政権がよほど性急に財政政策を実行したいと企てない限り、財政赤字は(景況により税収が左右される分を除いて)大きく変化することはない。

トランプ氏当選直後は、様々な憶測で円ドル為替レートが大きく動いているようだが、これはあくまでも憶測にもとづくものにすぎない。トランプ新政権の財政赤字要因が、円ドル為替レートに本格的に影響するのは、来年以降とみるべきである。これが、トランプ氏当選直後に渡米した私の印象である。

来年1月のトランプ氏の大統領就任までの間は、財務長官をはじめとする閣僚や議会共和党の要職に誰が就くかが、今後の財政政策の行方を占う試金石となろう。
 

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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