政策は祖父、性格は父似の安倍首相 安倍首相の手本は何か?

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6月15~16日にポーランドを訪れた安倍首相はワルシャワでのレセプションの挨拶で「1985年に父晋太郎外相の訪問に秘書官として同行した。さらに日本とポーランドの国交回復は祖父の岸首相の時代の57年」と述べたという。

言わずと知れた3代目の世襲政治家だが、安倍晋太郎氏の夫人、岸元首相の長女で母親の安倍洋子さんは、安倍首相の個性について、10年前に『文藝春秋』(2003年11月号)に寄せた「息子・安倍晋三 特別手記」で「私からみると、『政策は祖父似、性格は父似』でしょうか」と書いている。

一方、みんなの党の渡辺代表も世襲政治家で、渡辺美智雄元副総理兼外相の長男だが、「困ったとき、親父ならどう判断するかといつも考える。親父が残した語録に答えが書いてある。その意味で、私は恵まれている」と率直に語る。

だが、父親を超えなければ、という気持ちは強い。父を超える残り少ない道は政権到達、と密かに思っているに違いない。

安倍首相は政権を握り、父が果たせなかった夢を実現した。父を超え、祖父に並んだ格好だが、岸氏の悲願だった憲法改正を実現しなければ、祖父を超えたことにならないとの思いがあるはずだ。

世襲政治家の場合、志半ばで終わった先代の遺志を継ぎ、父子2代、ときには祖父・父・子の3代で目標の達成を目指すケースも少なくない。安倍首相も政界入りの当初から「祖父の未完の夢」の改憲実現を、という気持ちがあるのだろう。

だが、岸氏は改憲一直線の猛進型リーダーではなかった。生前、インタビューで、政治が果たすべき最大の役割は、と尋ねたことがある。「両岸」とからかわれたこともある複眼思考の岸氏は、「そりゃあ、一億日本国民をどうやって食わせるかだ」と断言した。

「政策は祖父似」の安倍首相は、アベノミクスを掲げる一方、改憲実現に意欲的だが、国民を食わせる、つまり好調な経済を実現しながら、併せて「祖父の未完の夢」の改憲実現に挑むことになる。

手本は何か。安倍首相も渡辺氏に倣って「岸語録」に答えを求めるかもしれない。安倍首相の今後の舵取りを解くカギは、もしかするとそこに潜んでいる。次回は、安倍首相が参考にすべき「岸語録」を書いてみよう。

(撮影:尾形文繁)

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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