米新政権は「アジアの秩序」をどう変えるか スタンフォード大の専門家が大予想

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(3)南シナ海における「航行の自由作戦(FONOPS)」(中国の人工島付近の米軍艦の航行)を定期的に行うべきだ。これまで、2015年10月に「USSラッセン」、2016年1月に「USSウィルバー」、5月に「USSローレンス」、そして10月に「USSディケーター」というミサイル駆逐艦が航行している。ただ、防衛当局者は3カ月に2回実施すると約束していたが、実際にはそこまでの頻度で実施されておらず、作戦へのコミットメントに対する疑問が生じている。

(4)これまで明らかにしていないことを主張すべきだ。すなわち、FONOPSは米海軍の力を見せつけるためだけに実施しているのではなく、それぞれの地理的な位置を確認することが目的であり、米国であろうと、中国であろうと、南シナ海を独占的、もしくは排他的に管理するべきではないことを主張しなければいけない。

(5)アジア太平洋および欧州諸国に、南シナ海は、その主権主張国だけでなく、利用者全体の共有財産であり、資源であるとの認識を得られるような革新的な方法による多国間管理を働きかけるべきだ。

アジアの重要性を考慮した国際秩序が必要

<グローバルガバナンス> フィリップ・リプスキー助教授

フィリップ・リプスキー(Phillip Lipsky)/政治学助教授兼トーマス・ローレン・センターの特別研究員。「Renegotiating the World Order: Institutional Change in International Relations」(ケンブリッジ大学出版、2017年)著者

第二次世界大戦後に米国によって作られた国際秩序の基本的な特徴は、驚くべきことに70年以上も変わっていない。米国は、東アジアの地政的安定化、オープンな世界経済、そして協力的関係を円滑にする国際機関を支持することで、アジア地域の進歩を促した。米国との関係がなければ、アジアは今日われわれが目にしているような活気的かつ平和的な地域にはならなかっただろう。しかし、アジアの進歩は、米国を中心とした世界秩序にとって最も大きな課題となる可能性もある。

21世紀に入ってアジアが世界の経済活動の中心となりつつある中、多くの経済学者は、21世紀半ばまでにアジアが世界経済の半分を担うことになると予想している。この傾向に伴って、国際連合、国際通貨基金(IMF)や世界銀行といった国際組織の構造に違和感が生じ始めている。これらの組織は米国を中心とした国際秩序の中心的存在で、形式や構造、本部の場所、人員構成なども西洋に重きを置いたものとなっている。こうした現状は、国際的地位を築きつつあるアジアの政治家にとって、頻繁に不満の種となっている。

こうした中、次期政権にとって重要なのは、グローバル構造の「再編成」である。手始めとして、主な国際組織を複数本部制にすべく働きかけるべきだろう(こうした動きは最近、民間企業で増えている)。そうすれば、「遠い西洋の国」で働く意欲を持ち合わせている才能ある職員を探さなければいけない問題を解決できるだろう。

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