米新政権は「アジアの秩序」をどう変えるか スタンフォード大の専門家が大予想

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<貿易> イ・ヨンソク研究員

イ・ヨンソク(Yong Suk Lee)/SKセンター特別研究員兼韓国プログラムの副理事。韓国の教育、アントレプレナーシップと経済発展にフォーカスした調査プロジェクトを率いる

アジアとの貿易政策は新政権の主要な課題となるだろう。米国のアジアへの輸出は、欧州や北米への輸出より大きいうえ、輸出規模拡大のペースもほかの地域を上回っている。この点から、新政権の環太平洋経済連携協定(TPP)への対応は、米国経済に大きな影響を及ぼすことになる。

過去2年間、特にアジアからの輸入品との競争や、アジアでの生産拡大に影響された地域において反グローバル化感情が広がった。しかし、拡大する自由貿易の恩恵を受けている企業や従業員もいる。たとえば2012年の米韓自由貿易協定は、農作物、自動車および製薬業界における輸出の安定的な成長へとつながった。

TPPはただやればいいというものでもない

もちろん、貿易協定によってマイナスの影響を受ける人もいるだろう。経済の仮説的観点からすると、損をする業界の企業と従業員は輸出セクターに移り、貿易からメリットを得ることができるようになる。しかし現実では、こうした業界や地域を超えた調整はゆっくりとしか起こらない。

実際、輸入拡大によって仕事を失ったノースカロライナ州の家具会社の従業員が、カリフォルニア州のハイテク業界で新たな仕事を得るのは容易ではないだろう。給与レベルが異なるうえ、違うスキルセットが必要となるからだ。

貿易政策では、職を失った従業員がほかの業界へ移動することを支援すると同時に、将来を見据えて学生たちを訓練することが必要となる。貿易政策はまた、今後どのようにして国際通商が行われるかを決定するのにも重要なものとなる。国境を超えたeコマースが増えるにつれ、将来の貿易ルールを決める交渉に参加し、それを誘導することは米国にとって重要なこととなるはずだ。

TPPはただやればいいというものではない。次期政権は、政治家や国民に、自由貿易の効果や影響、また、米国における貿易協定の経済的、および戦略的重要性をきちんと教えるべきだろう。
 

東洋経済オンライン編集部

ベテランから若手まで個性的な部員がそろう編集部。編集作業が中心だが、もちろん取材もこなします(画像はイメージです)

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