米新政権は「アジアの秩序」をどう変えるか スタンフォード大の専門家が大予想

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米国はまた、中国が設立したアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加し、この組織を既存のグローバル構造へきちんと組み入れ、その成功に貢献し、国際ガバナンスへのアジアからの貢献を歓迎するという態度を示さなければいけない。米国は太平洋の勢力であり続けるとアジア諸国に保証する制度作りを行い、アジアの再編成を継続させると同時に、深化させることも重要だ。

東南アジアの支援が重要に

<高齢化問題>カレン・エッグルストン研究員

カレン・エッグルストン(Karen Eggleston)/アジア健康政策プログラム上級特別研究員兼理事。「Policy Challenges from Demographic Change in China and India」(ブルッキングス研究所出版/ショアスタインAPARC、2016年)の編集を担当

アジアの喫緊の政策課題の中に人口問題があり、これがアジアの経済および地政学的意味での復活の裏に潜んでいるということを米国の政治家は心に留めておくべきだろう。東アジアと東南アジアの一部は人口の高齢化に直面している。日本は世界で最も高齢化が進んでいる国であり、韓国の高齢化の速度はさらに速い。

一方、東南アジア諸国の高齢化はもっと緩やかなものだが、これらの国は、増加する生産年齢人口を生産的な業界で雇用することに加え、「人口の配当」を実現するという課題に直面している。こうした課題を解決するには、生まれてくるすべての子どもの健康、教育、そして機会均等に的を絞った莫大な投資が必要になるだろう。

中国が最近発表した、「1人っ子政策」撤廃は、国民が選択肢を持てるようになるという点で非常に重要だが、これによって生産人口の減少や高齢者の割合増加といった流れを本質的に変えることはできない。中国の60歳以上の人口は、今日の約15%から2050年には33%に増える見込みだ。その頃には中国における80歳以上の人口は、現在のフランスの人口より多くなるだろう。

中国やその他のアジア諸国が高齢者大国になることによって、公的および私的年金制度の財政は脅かされる。そして高齢化と同時に進む都市化、技術の進歩や収入格差は、多くの社会政策への公平かつ永続的な財政支援の脅威となるだろう。

人材への投資と社会・経済的制度の改革は、今後起こるかもしれない事態に立ち向かう核となる。次期政権はこのような投資を支えるとともに、公的医療制度と、慢性疾患を抑制のための一次医療の強化を支え、次の伝染病の流行に備えなければならない(伝染病の多くはアジアで発生している)。

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