プーチン大統領が自ら指導する極東経済特区 最前線で関わるJBIC前田副総裁に聞く
――今年5月にロシア・ソチで開催された日露首脳会談において、安倍首相は「健康寿命の伸長」や「ロシアの産業多様化・生産性向上」などからなる8項目の経済協力プランを提案しました。
JBICは、8項目中6項目について関わるような案件がたくさんきている。今まで(のロシアとの経済関係)はどちらかというと資源エネルギー、化石燃料が中心だったが、今回は資源エネルギーでもダウンストリーム(下流)だったり、農業などの案件も出ている。
たとえば、日揮はハバロフスクでビニルハウスの温室栽培を手がけ、トマトやキュウリをつくっているが、市価よりもだいぶん高く売れる。中国から野菜を輸入しているのだが、不安で誰も食べたがらない。だが、日本製の野菜は高く売れる。
また、ロシア人の平均寿命は男性なら60歳と非常に短い。医療サービスの向上やQOL(生活の質)を高める期待やニーズがある。これまでのように石油や天然ガスを売ったり買ったりという関係だけでなく、こういうものからさらに発展していく(可能性がある)。
ロシアは(欧米から経済)制裁を受けているし、油価も一時よりかなり下がっている。産油国全般にもいえることだが、モノカルチャー的な、多角化されていない経済は弱い。ロシアはそういう経済を多角化していこうという意識が非常に強いと思う。
制裁の渦中でも、経済運営はしっかりしている
――経済制裁が与えるダメージは相当強いのでしょうか。
制裁を受けて、ロシア経済は相当ひどいのではないかという人がいるが、われわれは非常に慎重にモニタリングしている。たとえば、油価が高いときに貯めていたファンドがある。そのファンドが銀行や(国営石油会社の)ロスネフチなどに機動的に資金を融通している。
さらに、ワシントンで開かれたIMF・世銀総会に私も出席してきたのだが、その場でIMF幹部から「ロシアのマクロ経済チームとは密接に連携している。彼らの能力は極めて高い」と高く評価する話を聞いた。具体的に言うと、経済発展省のウリュカエフ大臣、財務省のシルアノフ大臣、ロシア中央銀行のナビウリナ総裁。米国の立場を離れた国際機関がそういう風な見方をしているのかな、と思った。
ウクライナの問題やシリア介入など、さまざまな政治的な要素があって(欧米諸国は)制裁をしているが、経済運営自体はしっかりしているというのは、やや発見だったと思う。
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