プーチン大統領が自ら指導する極東経済特区 最前線で関わるJBIC前田副総裁に聞く
――日本が相対で領土問題を含めてロシアに接近すると、国際的な反発はありませんか。
それは難しい要素がある。北極海のヤマルLNGプロジェクトを進めているロシア企業にノバテック社があり、このLNG事業は年産で1600万トン。これまでで最大のサハリン2プロジェクトが年産1000万トンだが、それよりも規模は大きい。フランスのトタルや中国のCNPCなどが参加するプロジェクトに対し、もうすぐ我々も融資できると思うが、(融資額は)全体の1%に満たない。
このノバテックのミケルソン会長と何度も話したのだが、彼はやはり中国とだけ組むのは嫌だと思っている。西側(の企業や資金)を入れたいと考えている。また、東方経済フォーラムの前にサンクトペテルブルグでロシア版のダボス会議が開かれたが、この場にはエクソンモービルの会長やEUのユンケル委員長、ドイツのシュレーダー元首相らも出席していた。
米国の政治的関係とは別に、経済的なところでは水面下、表面に出ているものも含め、欧米勢はしたたかだ。とくに欧州はそうだ。日本は生真面目なので、(制裁や反発を)すごく恐れる。イラン制裁のときに、HSBCやBNPパリバなどの欧州系銀行は、ILSA(対イラン・リビア制裁法)に引っかかり、巨額の罰金を支払った。ロシアに対しても同じようなことが起きるんじゃないかという懸念があるのだと思う。
ロシアとの平和条約はあった方がいい
――日本にとってロシアに接近するメリットは何でしょう。
私は政治家ではない。われわれは、領土などの政治的判断に一切関係なく、あくまで日本のビジネスのこととしてやっている。これまでのロシアビジネスは資源。資源はもちろん極東にたくさん存在しているが、これまでのビジネスは極東はあまり相手にせず、モスクワとだけやっていた。しかし、これがだんだん広がっているな、という印象を持っている。北海道でも、例えば北海道銀行などは隣人、隣国としてのロシアとの関係をよくしようという意識があり、すごく積極的だ。
もちろん、プーチン・安倍両首脳の関係があり、お互いのケミストリー(相性)が合うということもあるのだと思うが、私が個人的に思うのは、中国と北朝鮮、ロシアと3正面に(同時に)向かい合うことはできない。ロシアとの平和条約もあったほうがいい。平和条約がないということは、戦争状態が一時休戦しているということなので、そういう意味ではノーマルな状態ではないと思う。冒頭言ったように、プーチン大統領が遅れている部分、不透明な部分を自分の指示で変えさせようという強いリーダーであることは間違いない。それは非常によいことだ。
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