「家庭に浸り過ぎない」男性はやはり魅力的だ 結婚しようがしまいが、どちらも楽しい

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一方の亜由美さんは、康孝さんにディズニーランドや香港に連れて行ってもらうたびに「サプライズ求婚」を期待していた。友人からも「年末年始に香港旅行? 素敵だね。きっとプロポーズされるよ」などと言われ続け、プレッシャーに感じていたらしい。しかし、康孝さんは何も言わない。そぶりさえ見えない。1年後のある日、相変わらずのん気な康孝さんの目の前で亜由美さんは涙を流した。

「私のほうから催促するのは嫌なんだけれど……。私との結婚をどう思っているの?」

慌てて康孝さんはプロポーズ。しかし、内心では不安を感じ続けていた。康孝さんは亜由美さんに打ち明けた。自分は本当に家族を養えるのだろうか、と。

「妻の両親は自営業です。『商売はいい時もあれば悪い時もある。3年ぐらいなら私が頑張って稼ぐから大丈夫だよ。3年もあれば、あなたも新しい仕事を見つけられるでしょう』と言ってくれました。結婚生活に心がスッと傾いた瞬間でしたね」

康孝さんは「こじらせ男子」というよりも「慎重男子」なのだと思う。そして、独身生活を楽しめる性質もある。

「結婚して2人の子どもにも恵まれました。可愛い彼らのためならば多少の不自由は厭わないし、いざとなったらアルバイトをしてでも食わしていく覚悟もあります。何でもないTV番組を見ても、妻という感想を共有できる相手がいるのは嬉しいです」

独身には独身の楽しさがある

このように前置きをしたうえで、康孝さんは表情を変えずに「独身には独身の楽しさがあると思う」と語るのだ。

「一人旅ならば安全や衛生面のことをあまり考える必要がありません。思いつきでどこにでも行けます。男同士だったら車中泊だって可能です。貯金も持ち家もそれほど必要はありません。僕は車がすごく好きなのですが、家のローンを返している今は好きな車を買う余裕なんてありません。独身だったらあんな車に乗れたのにな~、と思うことは今でもあります」

万が一、亜由美さんと別れるようなことがあったら、康孝さんは二度と結婚はしないつもりだ。筆者のように再婚する人の気持ちがよくわからないと言い切る。

「せっかく手に入れた独身という自由をなぜまた手放すのでしょうか。僕には理解できません」

幸せな家庭生活を送る今でも、独身者の心を持ち続ける康孝さん。30代半ばまで結婚しない男性には、康孝さんと同じような性向を持つ人が多いように思う。

彼らは結婚をしても大きくは変わらない。バランス感覚に富み、「家庭の温かさ」に浸り過ぎず、さまざまなことに好奇心を持ち続けるのだ。だから、一緒に飲み交わしていても楽しい。康孝さんのような人は、たとえ独身に戻ったとしても周囲の女性が放ってはおかないだろう。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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