石黒:好きじゃないですけど、家はきれいですよ。人が来ると驚くぐらい。事務は嫌いというよりできないですが、努力していますし(笑)。たぶん事務能力が劣るのでしょうね。今のようなソート機能がない時代、コピーにものすごく時間がかかってしまって。1枚1枚机に並べたりしていたので、あきれられるほどでした。
でも、事務が苦手と公言するのは甘えているみたいじゃないですか。「私はえらいから、そんなことやらなくていいわよ!」って感じで。だから能力に欠けている分すごく努力をして、自分比では前の10倍ぐらいはできるようになりました。
自宅に関して言うと、機能的なものを隠しておくのが好きです。メカ類というのは、往々にして機能優先なのでデザインが今ひとつ。そういうものを外に出したくないので、動線がひとつ増えても収納してしまいます。だからうちに来ると、「ものがない!」とみなさん言いますね。
楠木:生活感がなさそうな。
石黒:それで、美しいものは外に置いとくわけですよ。たとえばアートとかつぼとかね(笑)。何もない部屋でそういうものだけポツポツと置いてあるので、「ここで生活しているの?」と聞かれます。
楠木:なるほど。シンプルな部屋で、ギーンって戸棚が開くと中は機能満載で、外にはアート。わりと美的なものがお好きなのでしょうね。僕は、いつも石黒さんのお召し物がステキだなと思っています。「フィレンツェのマダムが来た!」という感じ(笑)。ファッションへのご関心はありますか?
石黒:実はまったくありません。「ステキだな」と思ってくださるのは光栄ですが、実はすごく安いものしか着ていないです。だいたいほかの同世代の経営者の方より1ケタ安いでしょう(笑)。
楠木:それはスタンフォードっぽいですよね。服におカネをかけない。
石黒:昔は普通の女性ぐらいにおカネをかけていたのですが、スタンフォードに行って感覚がマヒしてしまいました。あちらでは、たまに高いバッグを持っていると、みんなが寄ってきて「すごい! すごい! すごい!」とか(笑)。シリコンバレーはまったくおカネがかからない。ものすごいお金持ちの人がボロボロの短パンTシャツでいるから、私もそっちのほうが素です。
しかし、テレビに出演するときなどは、周りも強い女性経営者の雰囲気を望んでいるだろうなと思って、安くてもそれなりに見える服を着ます。私はサービスプロバイダーなので、その時々で相手の要望に応えているだけなのです。
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