インフレターゲットがもたらす弊害
インフレターゲットが持つ第二の問題は、弊害があることである。
すでに述べたように、名目金利の上昇は、それが期待インフレ率の反映である限り、実体経済活動に影響を与えない。
しかし、次の場合、経済活動の抑制につながる可能性がある。
第一は、期待されたインフレ率上昇が、実際には生じなかった場合だ。この場合に何が起こるかを、前述のモデルで説明しよう。
インフレ期待が高まると、名目金利はr+π+⊿に上昇する。しかし、実際にはインフレ率は不変で、来期の物価は(1+π)p0のままだったとしよう。こうなると予測する人の行動はどう変わるだろうか?
この場合、現時点で1円貯蓄した場合に来期に購入できる実質値は、(1+r+π+⊿)/(1+π)p0となる。これを近似すると、(1+r+⊿)/p0となり、⊿が正であれば、前より大きくなる。つまり、いま支出せずに将来支出したほうが有利になる。このため、現在の消費が抑制される。名目金利が上昇するため、消費せずに貯蓄するほうが有利になるからだ。
投資についても同様である。将来の生産物価格は高くならず、比較すべき名目金利が上がるので、投資は抑制される。
多くの人は、2%というインフレ目標は達成できないと考えている。しかし、金利は現実に上昇している。したがって、ここで述べたような経済抑制効果が働く可能性が高い。
第二は、財政への効果だ。名目金利が上昇すると国債の利払いが増加し、財政の維持可能性に対する信頼がゆらぐ。そうすると、実質金利が上昇する危険がある。
このように、インフレターゲットは、百害あって一利ない。それはいまや、日銀のアキレス腱になりつつある。
過ちを改めるに遅すぎることはない。日銀は、一刻も早く、インフレターゲットを取り下げるべきだ。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら