──中国テーマが全700回強のうち100回を超えていますね。
たとえば中国のある農村の少女を2002年から取材し始めた。都市部に出稼ぎに来た一人の少女を追いかけ、取材したディレクター、少女とも当初は1回だけと思っただろう。まさかその後も10年にわたって取材するとは。彼女はその間に結婚して子どもができ、湾岸でマンションを買い、一方で勤めていた工場が時代遅れになり失職。無名の少女の成長を通して中国経済の10年間の変動が見られるものになった。
最近はさらなる新興国が増えて中国ネタは減っている。数年前まではどう外国人観光客を増やすか、あるいは地方活性化のテーマが多かった。盛り上がるタイミングの少し前、これから来そうだというテーマこそが「ガイアの夜明け」の視聴者の期待に応えられる。
──中国ネタは畳みかけました。
この間、日本企業が中国にどっと進出し、生産拠点・販売拠点づくりなど、話題に事欠かない。食品を含む偽物騒動、環境汚染など、あれやこれやで多くなった。
ドキュメンタリーの醍醐味は「変化」
──兆しの段階でBOP(ボトム・オブ・ザ・ピラミッド)ビジネスにも注目しました。
当時は寄付としか当事者も考えていなかったようなビジネスに密着できた例に、小田兼利さんが率いる水質浄化(日本ポリグル)がある。タンザニアはじめエチオピアなどにも浄化施設を作り、内閣府からも日本のBOPビジネスのモデルケースとして取り上げられたりしている。
──無名の人の変化なり成長なりの過程を描くことに。
ヒューマンドキュメンタリーの醍醐味は変化を目撃することだ。その変化は、たとえば背景として企業復活もあるし、画期的な商品開発もありうる。志したところから実現まで、主人公が成長しながら考え方が変わっていくといった心の変化も、映像ドキュメンタリーで明確に表せる。それが重層的に出てくると、見応えがある。
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