教育困難校の「英語の授業」で見た悲惨な現実 アルファベットも書けない生徒が大量に存在

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だが、そんな課題にもいいかげんに取り組んだり、ほとんどやらない生徒もいる。彼らは、そもそも高校に来たくて来ているのではない。「今時、高校くらいは出てないと」と親に言われてしぶしぶ来た生徒たちだ。だから、学習意欲もないし、辞めることになっても構わないと思っているので、ちっとも勉強に身が入らない。自分と同類の生徒と話すだけでなく、真面目にやっている生徒をからかったり、ちょっかいを出したりする。そんな生徒たちを教師はつねに目の端で監視し、時に声を荒げて注意しながら、机間巡視を続けていく。

プリントを始めて10分が過ぎ、そろそろ教師の元に生徒が並び始める。本来持っている能力は高いが、小・中学校では何かしらの理由で不登校になってしまった生徒は、丁寧に書いたプリントを持ってきて、一度の確認でOKとなる。しかし、いい加減でいいから少しでも早く終わらせてしまおうと考える生徒の答案は、書きなぐった乱暴な字で記されており、確認作業も一苦労になる。

全員が見せにくるまで待っていると、それだけでこの時間は終わってしまうので、プリント学習は毎回20分で時間を区切っている。今日も、いつもの数名の生徒は教師に見せに来られなかった。「まだの人は、できたら放課後に見せに来て」と大声で話しながら、頭の中には、今日も結局彼らは来ないだろうとの確信がよぎっている。

言葉で説明し、同じ内容を黒板に書く

その後、授業終了時のチャイムまでの15分程が教科書を使った学習をする時間となる。教科書の各章の中から、少しでも生徒が興味を持ちそうな内容を選んで扱い、ワンセンテンスごとに言葉で説明すると同時に、同じ内容を一字一句丁寧に黒板に書く。生徒が予習していて、授業で教師の説明を聞いて知識や理解を深めていくという授業はとうにあきらめている。

時間はかかるが、教師がワンセンテンスごとの英文、和訳文、注意するポイント等をチョークで色分けし、記号も使って見やすく書いていき、生徒にそれを丸写しさせるほうが、効果的とわかった。手を動かして、ノートに書き写させる作業が、生徒の精神安定上にはいちばん良いようで、ほとんどの生徒は何とかやろうとしてくれる。結局、教師が自己流教科書ガイド、いわゆる「虎の巻」を毎時間作って生徒に示しているような授業になっている。

教師が奮闘しているうちに、授業終了を知らせる待望のチャイムが鳴った。「今日は、教科書が10行も進んだ、よく頑張った」と、少しの満足感とともに教室を去る。

全般的に学力が低い教育困難校の生徒たちだが、中でも苦手なのが英語と数学である。このうち、生来持っているセンスや性格が学力に影響し、なおかつ母国語で学習が進められる数学に比べて英語は、その生徒の成育環境や家庭の経済力の差が学力に大きく反映されると感じる。

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